こんにちわ、ぜつえん(@zetuenonly)です!
みんなが不確かで曖昧に覚えてることを明確にする、のは需要のあることだと思ってます。
ときに、テントを探しているときに見かける「最小重量〇〇g(総重量△△g)」の表記の意味を知っていますか?
どっちが何の重量なのか、意味は知ってるけどどちらを参考にすべきか、最小重量と総重量の差がテントごとに違うのをどう考えればいいのか等。
そこまで考えたことも無い人も多いのではないでしょうか?初耳だった人もいるかもしれません。
今回はテントの最小重量と総重量の意味、2つの関係性を掘り下げて話していきます。
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ASTMとEN・ISO
テントの公式サイトや販売ページで書かれるスペック一覧の中にある最小重量と総重量。
MSRはわかりやすく、いきなり答えが書いてありました。
そう、最小重量とはフライ+テント本体+ポールのみで測った重量のことでした。
この記事の一つ目の答えがこれ。最小重量がわかればほぼ終わりです。
でも面白いので、さらに深掘りしていきましょう。
ASTM International F1934-98(2018)
MSRの海外公式サイトのQ&Aを翻訳し、引用。
パッケージドウェイトとミニマムウェイトとは何ですか?
MSRでは、この2つのテント業界用語について、ASTM International F1934-98規格に自主的に従っています。この規格では、パッケージ重量とは、棚から出されたパッケージされた内容物の総重量を指します。一方、最小重量とは、テント本体、レインフライ、テントポールの合計重量を指しますが、テントステーク、ガイコード、スタッフサックなど、パッケージに含まれる可能性のあるその他のアイテムは含まれません。
MSR のバックパッキング・テントの多くは、レインフライ、ポール、フットプリントのみを使用して設営することができ、テントの仕様では、この業界標準ではない設営オプションを「ファスト&ライト・ウェイト」と呼んでいます。
引用元:MSRgear.com
MSRの従ってるテントの規格は最小重量と総重量のがあるよ、MSRにはファスト&ライトウェイトもあるよ、とのこと。
その規格がASTM International F1934-98。
ASTM International(旧:American Society for Testing and Materials:米国試験材料協会)は、世界最大規模の標準化団体が策定する規格のことで、アメリカで使われることの多い規格です。
“F1934-98”がそれぞれの規格を表した規格番号です。
A~Gまでのアルファベット+数字3~4桁+年号末尾で表記されます。末尾の98でこの規格が1998年に制定されたことがわかります。
ASTM規格は5年ごとに再確認が必要であり、F1934-98(2018)の()内は再確認をした証明です。次は2023年です。
R値 ASTM F3340-18
ASTMがアメリカで使われる規格という知識があると、2020年頃から使われるようになったマットの断熱値を表すR値の規格ASTM F3340-18のことも見えてきます。
2018年に制定されたばかりでサーマレスト、ニーモ、シートゥサミット、ビッグアグネス、とアメリカの会社が多いのもASTMだからこそなのでしょう。
ただエクスペド(スイス)やマウンテンイクィップメント(イギリス)も導入しているため、全世界に広がる流れだとも思います。
寝袋 EN13537・ISO23537
寝袋の保温力を表すのに使われるEN13537(ISO23537)。
ヨーロピアンノームとも言われるようにヨーロッパ各国で広がるEN ISO規格です。
すでに日本の寝袋でも使われて、アウトドア業界に浸透した規格であると言えます。
それと比べ、テントのASTM F1934-98は、R値のASTM F3340-18や寝袋のEN13537のように記載することで信頼性が上がるようなモノでは無く知名度も低め。
最小重量、総重量の表記の統一性が確実ではないであろうことがわかります。特にアメリカ以外のブランドでは。
そんなアメリカ主体のASTM、ヨーロッパ主体のEN・ISO。
歴史の背景が見えてくるような、そこまでは見えないような、という規格の話でした。
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最小重量と総重量
話を戻してテントの重量。
最小重量とは
冒頭通り、テント本体(インナーテント)+フライシート+ポールを合わせた重量が最小重量。
よほどマニアックな改造をしない限り変わることのない重量です。
英語ではTrail Wight(トレイルウェイト)やMinimum Weight(ミニマムウェイト)と表記されます。
ブランドによってはテント本体、フライシート、ポールの重量を別々に表記してくれているとこもあり、それはそれでありがたい配慮。
最小重量は原則、本体やフライシートについた張り縄の重量を含まない重量です。
ただし、小規模メーカーがASTM規格を意識してるとは思えず、ぼくを含めた個人ブログで書かれる実測最小重量では張り縄を外さない場合が多いように思います。ぼくは外しませんし。数グラム、数十グラム程度は変わるでしょう。
最小重量を決める物の一つがポール。
同じアルミポールでも、よくあるアルミポールとDAC NSLかDAC NFLでは重量は大きく変わってきます。ってことを最近DAC NFLΦ8.7mm使って知りました。
フライシートは厚み(デニール)による重量が大きいですが、テント本体(インナーテント)の重量はメッシュか非メッシュかでも大きく変わってきます。そのため比べれば4シーズンテントのほうがやや重くなりやすい傾向にあると言えます。
そしてフライ、インナー共にテントが大きくなるほどに生地が増えて重くなります。
最小重量は販売者や発信者が“テントの重さ”を記載するときに軽く見せることができるため、最小重量を大きく書いて軽いテントアピールされることも多くあります。
※で総重量を記載してるならむしろ良心的。一流ブランドですら最小重量しか書いてないことも多くあります。
良く見せるための方法で悪いとは言いませんが、優しくないなと思ってしまいます。
テントの種類で最小重量と総重量の差は大きくなるため、過信したくない表記とも言えます。
ただペグ、張り縄、スタッフバッグなどを好みのモノに変える人なら最小重量が最も重要になってきます。
総重量とは
最小重量(テント+フライ+ポール)に、その他周辺パーツをすべて含めたのが総重量。
ペグ、張り縄、スタッフバッグ(テント用ポール用ペグ用)、グラウンドシートなども含めた重量のことです。
英語ではPackaged Weight(パッケージドウェイト)やMax Weight(マックスウェイト)と表記されます。
総重量は最小重量よりも重く見えてしまう数値で、ブランド側も大々的には書きたくないのかなと思ってます。
「最小重量1030g,総重量1340g」と書くよりも「最小重量1030g」だけ書くほうが軽く見えるよね、という話。
特に海外ブランドのテントを輸入販売してる会社に多い現象で、詳細スペックを知りたい時は海外公式を翻訳しなきゃいけないなんてことも・・・もちろんニーモ代理店のことです。すごい良いモノ卸して売ってるのにせこく見えてしまうし、ユーザーなめてんじゃねーぞと言わざるを得ない。逆にビッグアグネス代理店は総重量と重量の表記がばらばらで意味が分からないけど、全部総重量のこと。最小重量も書いてくれ。
総重量-最小重量=パーツ重量
スペックに書かれることはありませんが逆算してわかる、パーツ重量 = 総重量 – 最小重量
総重量と最小重量の差であり、付属品の重さのことで、ぼくの造語。
テントの付属品として書かれることもあるパーツの重量、付属品の違いで大きく異なる重量です。
超軽量テントなどでは「ペグ〇g×△本」「スタッフバッグ〇g」と個別のパーツ重量が書いてあることもあります。
フライ張り重量(Fast&Light Weight)
MSRが言っていたFast&Light weight(ファスト&ライトウェイト)。
フライ+ポール+グラウンドシートの重量のことで、インナーテントが省かれた重量です。
BigAgnesはFast Fly Weight(ファストフライウェイト)と表記しています。
これに適した日本語は無いと思います。ぼくならフライ張り重量と呼んでみました。
自立式のタープ+グラウンドシートと考えるとタープ泊に近い用途ができることがわかります。
MSRやBigAgnesの製品ページではオシャレなフライ張りの写真が使われてることも多いんですが、ぶっちゃけやらない。実際やってみるとテントを普通に立てるよりも時間がかかるほどで、それで泊まるつもりなら最初からタープ泊するわ、と思ってます。
シートゥサミットが2021年に出した新作テント「テロス」でHANGOUT MODE(ハングアウトモード)という、フライ+ポール+トレッキングポールを使った新しい概念を生み出してきました。
レビューで写真や動画を撮る人が一回目の試し張りでしかやりませんよ。
公表重量と実測重量
アウトドア系のブロガーやユーチューバー達は昔から買う前から重量がわかってるにも関わらず、届いた製品の実測を出します。
個体差と精度のための実測であり、テントでは生地の裁断や裁縫、シームテープの張り方などで変わってくるようです。
有名ブランドほど良い工場で生産することで個体差を減らしていますが、人間の仕事でズレの発生は仕方のないこと。
それでも公表重量と実測重量のズレの少なさはそのブランドの信頼性、質の高さに繋がると思います。
実用重量
最小重量でも総重量でもない、実用重量があなたが実際に使うテントの重量。
カタログスペックの数値という絶対のモノに騙されず、あなたのあなただけの実測実用重量が全てです。
数泊のテント泊登山では雨を吸ったテント生地は重くなり、それを背負って歩き続けます。
フライの素材に使われるナイロンは強度が高いですが、吸水率が高い欠点があります。つまりは雨の後の山行で荷物が重くなるわけです。
ポリエステルはナイロンより強度は劣りますが、吸水率は低く、濡れても軽く乾燥しやすいメリットがあります。
雨の多い日本ではポリエステルの優位性が高くなります。
モンベル ステラリッジやプロモンテ VLがあえてフライにポリエステルを採用している理由が吸水率の低さからです。
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形状の違いによるパーツ重量の差
パーツ重量を深掘り。
パーツ重量の中でも占める割合が大きく、テントごとに差が大きいのがペグ。
1~3人用サイズのテントなら8~12本位付属してきます。16cm程度のアルミペグなら1本10g前後で80~120gです。
非自立式テントや耐風性が高い張り縄の多いテントはペグの本数が増えて総重量が重くなりやすい傾向があります。
逆に軽量性が売りのテントならパーツ重量も削ることでより軽く見せてます。
テラノヴァのレーサーパルス1は1gのペグが8本で約8gという嘘みたいな軽量化をしています→参考(最新ソロテントをリアル旅人ホーボージュンが徹底テスト!/BE-PAL)
スタッフバッグは厚みでも数十グラムの差があり、純正でコンプレッションバッグなら便利ですが総重量は重くなります。
そのため一概には言えませんが、パーツ重量(総重量と最小重量の差)が少ないほど軽量性を重視したテントであり、強度耐風性は落ちやすく、パーツ重量が多いほど強度耐風性に優れることが多い印象があります。
自分で交換することで軽量化しやすいパーツ重量ではありますが、張り縄やペグの必要数が減ることはありません。グラム単位で軽量化をするなら最小重量と総重量だけでなく、パーツ重量を考えてテントを選ぶのもアリかもしれません。
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最小重量と総重量でテントを比較
無作為にピックアップしたテント23つの最小重量・総重量・パーツ重量で表を作りました。
パーツ重量の軽い(差が少ない)順に並べています。
シングルダブルウォール、自立非自立半自立ミックスのごちゃまぜ。
1~2人用でポールを使うテントで、トレッキングポールシェルターではないのが共通点。
テラノバのパーツ重量が異常に軽いのはペグが1gだから。1gと10gのペグが10本ある場合では90g変わります。
ペグや張り縄を変えて総重量よりも軽くするのは一般的ですが、テラノバに関してはペグを変えて総重量よりも重くなるであろうテントです。
パーツ差400gあるヒルバーグはカタログ表記の重量がざっくり過ぎて精度が不明。と思って自分のソウロレビュー見たら旅行中で実測測ってませんでした。
なかちんさんのブログを見たところ、アクトが実測最小重量1272g(総重量1606g)、ソウロが最小重量1952g(総重量2375g)でした。ほぼカタログ値ですね。
張り縄が太い多い重い+収納袋が重いのが影響しているパーツ重量のようです。やはりヒルバーグはこのラインナップの中では別格。
それでもテラノバ2種とヒルバーグ2種を除いた19テントの平均値を一番下に出しました。
それが199.7g。約200gです。
パーツ重量200gと言えば、モンベル ステラリッジ1型がジャスト。
山岳テントのスタンダードながら、夏用テントに比べれば強めのモデル。張り縄4本、16cmアルミペグ12本、スタッフバッグでの重量が200gです。
ここで結論。
パーツ重量(総重量-最小重量)は1~2用テントで
200g以上:重めのテント。登山よりもキャンプモデルや冬用モデル。
150~200g:一般的な山岳用テントややや軽量テント(自立式多め)。
100~150g:かなり軽量性を重視したテント。
100g以下:ペグをがっつり削らないとたどり着けないテント
という傾向がある(あくまで目安)
まとめ
ぜつえんらしい内容で楽しく書けました!
ぶっちゃけ、最小重量の規格があっても全てのテントブランドがその規格を使ってる保証もなく、総重量の付属品も違うわけでして。
だからこの記事で、比較で明確に見えてくるモノも無いわけです。
そんな大した意味のないことを掘り下げて核心を突いたかのように意味を持たせようとするのがぜつえんらしいなと、そう自分で思いました。いとおかし。
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