こんにちわ、ぜつえん(@zetuenonly)です!
前編は嘘みたいに長かったですね。
あれを読んで後編まで読み進めてくれたことに感謝します。ちなみに同じ位の長さです(笑)
今回の後編は実際に川や湖を乗り比べた時の性能の違いやパックラフトの選び方を話していきます。
※記事中の文字入り画像などはタッチで高画質版が見られます。
記事ボリュームが増えすぎるので2記事に分けてます。
・後編[乗艇編]3艇を川や湖で乗り比べた比較←この記事
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MRS3艇+GRIFFONRAFT1艇
MRS3艇とGRIFFONRAFTストレウスの4艇を乗り比べていきます。
スペック比較はこちら。
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膨らます速度
さあパックラフトに乗るぞ・・・の前にパックラフトを膨らます話から。
ポンプサック
パックラフトらしさであり、パックラフトの売りの一つでもある専用ポンプサックでの空気入れ。
大きな袋の片側にパックラフトと繋ぐねじ込み式の口が、もう片側は大きく開き2本の硬いパーツが入ってて口を閉じやすくなってます。
ねじ込み式に太いゴムパッキンがついてるので漏れなく空気を入れることができます。
二重バルブを全開にして、ねじ込んで本体と接続。
ところでねじ込むと袋も捻じれて空気が入らなくなるので、って手間も手間です。
慣れが必要ですが、袋の形を広げるようにして空気を入れ、2本の硬いパーツが入った部分を折り込んで形を作り、体全体でつぶすようにして本体に空気を入れます。
コツはバサバサして袋が膨らんだ形を作る、口は折りたたむように閉じる、押し付けるのではなく体でつぶす、です。
最終的には口で空気を入れるので9割程度入ればOK。
MRSもグリフォンラフトもそうなんですが、二重バルブになっていて中間バルブを閉めておけば逆止弁付きで空気は入るけど出てこない作りになっています。
“ボストンバルブ”と言われる低圧なインフレータブルボートで使われるバルブで、パックラフトで良く使われています。フロンティアもこのタイプですね。
アルパカラフトやココペリでは“軍用バルブ”や“ラフトバルブ”などと呼ばれる別タイプのバルブが採用されています。
せっかくの二重バルブなのに専用ポンプサックでは逆止弁の上から入れることができないんですね。
そのためポンプサックで空気を入れる→ポンプを外す→急いでバルブを一つ閉める→口で入れる→バルブを閉める、という手間が必要です。
後述しますが、多くの空気を入れるために二重バルブの上からでは入らないのが原因でした。
最後は口でパンパンになるまで空気を入れます。
また水に浮かすと温度が下がることでチューブ内の気圧が下がり、少ししぼむので追加で空気を入れる必要があります。
電動ポンプ
なんだかんだポンプサックが面倒で結局使うのは電動ポンプです。
Flextailgear(フレックステールギア)から数種類の小型電動ポンプが出ています。
このブランドのポンプは6個使ったことがあって、パックラフトならMAX PUMP 2PROがベストバイです。
パックラフトで使うなら空気量が300L/minのモノがおすすめ。例外として142L/minのMAX BOAT PUMPも便利。
最軽量TINYが、2倍近い時間がかかるためパックラフト用に新しく買うのはおすすめしません。
バルブ
二社でバルブが微妙に違いましたがどちらもボストンバルブ。MRSのモノが良く見るタイプです。
使い勝手とスマートさ的にはMRS。ストレウスは少し出っ張ってます。
電動ポンプではフタを開けて二重バルブの上から空気を入れてました。
が、MRSでは「プウー」という音が出て明らかに膨らむまで時間がかかってました。
バルブを見てみると中に仕切りがあって、どうやら空気の入る量が制限されていたようです。
ストレウスは三分割でまだそれなりに空気が入ってくれますが、MRSは仕切られた穴が小さいので二重バルブの上から入る空気の量も少ないため異音がしていたようです。
と二重バルブを外して直入れしたら異音も無くなり膨らます速度も一気に早くなりました。
Flextailgearのポンプには付け替えの口がたくさんついてます。
二重バルブの上からならグレーのゴムが付いたアタッチメントが便利ですが、直入れを想定するとやや細くなった硬い口が便利です。
良い感じで差し込めば手を離してもこの状態まで抜けずに膨らませてくれます。
最軽量TINY PUMPではアタッチメントと本体の接続に耐久力が無いため自重で外れてしまうのでテープなどで固定しないとこの膨らまし方が出来ません。
もちろんシートやバックレストにも使えます。
ちなみに吸気するための頭側を付けると空気を抜いて圧縮にも使うことができるためパックラフトを小さく畳むときにも活躍してくれます。もはや電動ポンプは必須品。
膨らます速度比較
FLEXTAILGEAR MAX PUMP 2 PRO |
ストレウス | Ponto | Microraft S | Viking Self Bailer |
二重バルブ上 | 前1:20 後1:10 計2:30 |
3:58 | 3:28 | 5:57 |
バルブ直入れ | 前0:39 後0:41 計1:20 |
1:43 | 1:28 | 2:01 |
専用ポンプサック | 前0:45 後0:40 計1:25 |
1:20 | 1:05 | 1:28 |
というわけで、二重バルブの上から・バルブ直入れ・専用ポンプサックの3パターンで4モデルに空気を入れて時間を計測してみました。
ストレウスは二気室なので前後別でタイムを計測。
やはり電動ポンプで二重バルブの上から入れるよりも直入れしたほうが倍以上早くなってました。
モデルごとのタイム差はパックラフト自体の空気量であり、タイムがその比較にもなりそうです。
にしても1分半~2分あれば膨らませてしまうパックラフトは手軽だなーと改めて感じます。
結果的に専用ポンプサックを使うのが一番早いですが、電動ポンプ直入れと比べても最大33秒程度の差ですし、二気室のストレウスに至っては付け外しの手間から電動ポンプのほうが早いという結果に。
専用ポンプサックはそれぞれ純正品を使いました。
オレンジがストレウス、黒がMRSです。
ストレウスはややねじ込み部の長さが短い分付け外しが早いです。
MRSのほうが2倍近く大きく硬めな生地で空気を入れるのは早め。
同じネジピッチで互換性があってどちらにも使えました。
専用ポンプサックは入れる時に動きが大きく体力的な消耗も激しい事を考えると正直専用ポンプサックを使うメリットは感じられません。
3-4000円の電動ポンプを別に買う必要がありますが、確実に電動ポンプは買うべき。
何なら専用ポンプサック要らないから数千円安くしてくれたほうが嬉しいですもんね。そのお金で電動ポンプ買うから。
結論は。
「MRSとグリフォンラフトのブランド間でバルブの差はあるが、専用ポンプサックよりも電動ポンプが便利。電動ポンプは二重バルブを全開にして空気を入れよう。電動ポンプはFlextailgearの300L/minモデルがおすすめ。」という話でした。
ポンプサックで膨らますアイディアは面白いけど、小型でパワフルな電動ポンプが出てきたことでメリットが薄れた感じがしますね。
パックラフトブランドが防水性と風量に特化した電動ポンプとか作ってくれたら面白いんですけどね。
ベストバイはMAX PUMP 2PROです。
MAX BOAT PUMPなら二重弁の上から満タンまで空気を入れることが出来て、口で膨らます必要もなく非常に快適です。
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MRS Ponto
では一つずつ湖や川で乗った使用感を比べながら話していきます。
ポントはオープンデッキのシンプルな艇。
一般的に川下りには不向きと言われるタイプです。
が、結論から言うとよほどの激流で無ければいけます。
快適性
パックラフトを選ぼうと探してると、スプレーデッキやセルフベイラーが欲しくなってどんどん高性能になっていきがちです。
でもパックラフトらしいって何かなと考えたらシンプルなことだと思うんですよ
それが軽さであり、手軽さに繋がってるわけですから。
ぼくは言いたい、オープンデッキこそがパックラフトらしいパックラフトであると。
乗った時の快適性で言えば4艇中最高で、文句のつけようがない乗り心地でした。
パックラフト上で暮らすならポントを選びます。
水のキレイな川に行ったら下ることなんて忘れてごろーんとしたいわけですよ。
サクッと展開して、サクッと乗って、ぶらーっと川で水と戯れる、そんなシンプルさがポントにはあります。
激流に向かないのも裏返せば頑張って川下りをする必要がないパックラフトなわけです。
艇内も広いわ広いわで、内長が135.5cmあると浅く座って足を伸ばしてもまだ広い。
その広さは流れの無い湖や川なら細身な大人二人が乗れてしまうほど。
二人乗りは想定されてないため、シートや背もたれの工夫が必要。最大積載138kgなので乗るメンバーの体重は気にするべきですし二人乗りは非推奨。
子供や犬と乗るならそれなりに快適でしょう。
直進性
スケグを付けることで左右の振れの減らし推進力に変えることで、湖や深く単調な流れの川では素早く進めます。
実際漕いで見るとロッカーの少ない直進向きなバウなのでスケグ無しでもそれなりの速度で進んでくれます。
さらにスケグを付けると左右の振れが一気に減って前への推進力になってるのが分かります。
広い内部と合わさって静水では快適な乗り心地。
流れの無い湖(静水)で8割位の力で漕いで時速4km位でした。
操作性
安定性や直進性と相反する気がしてた操作性。
回転性や方向転換など川下りで必要な細かい動きのことです。
底が平らでパックラフト自体が回転しやすい乗り物なこともあって回転はしやすいですね。
ただ幅広でサイストラップが無いため艇を傾けにくく、他モデルと比べるとややもっさりした動きに感じました。
といっても1日に4艇を乗り比べて感じる程度で、他モデルが動かしやすいのもあってポントのもっさり感が目立った印象。
それでもエディキャッチやフェリーグライドなど艇を傾ける必要のあるような動きはかなり厳しいポントです。
川下り
ポントが川下りに向かない要素は3つあります。
・ロッカーの入ってないバウ
・サイストラップが付けられない
・水が溜まりやすいオープンデッキ
パドルスポーツ初心者で、パックラフトも乗り始めたばかりですし、「ホワイトウォーター用にはロッカーが入ってる」程度の知識しかありませんでした。
実際ロッカー有無を同じ瀬で乗り比べてみると違いがわかりました。
ロッカーの無いポントは瀬に対して直撃してるような感覚があって勢いを殺されてしまいます。
また直撃のタイミングで艇の向きもずれてしまってがちで安定しない感じ。
こんな当たる瀬が連続すると一気に大変になるのがポントであり、ロッカーの無いパックラフトです。
逆に連続しない単発の落ち込みや瀬は平気で突破できます。
ただ生地が弱いからか落差がある場所では腰横辺りが折れ曲がるのが体感でもわかり、ちょっと気になります。
口で膨らます程度の圧で剛性の低いパックラフトだから大なり小なりあるんですが、ポントは特に弱さが気になりました。
パンクに繋がるとかではないんですが、落ちてる感じがすごいんです。
そして膝を固定するサイストラップが無く、グラブループ的にも自作ストラップを付けることができません。
川下り用モデル以外にはサイストラップは付いてないんですが、グラブループ的に対応できないのがややネック。シンプル過ぎるポントの欠点ですね。
サイストラップがあれば体で艇を傾ける操作がしやすく、バランスを崩したときも引き戻しやすくなります。
別売りでループなどから付けるDIYセットもありますが、ポントには過剰だと思っちゃうので不安定位が楽しいポントなのでしょう。
そして、軽量で快適なオープンデッキの弱点は川下り中にどんどん水が溜まっていくこと。
瀬に当たったときに入ってくる水やパドルから垂れてくる水がじわじわと。
大きな瀬では一気に水が溜まってしまいます。
落ち込みで捕まると背中側からガンガン入ってきてそのまま沈。
水が溜まるほどに艇は重くなり操作性が悪くなって若干沈んでいきます。
そんなときに浅瀬でひっくり返して水を出すのが水抜きです。
川下りで積載が多いこともレアですが、荷物が重い時や溜まった水が多い時はひっくり返すのが大変になります。
また都合よく上陸することができず水抜きできないことも多いですし、そもそも水抜きは手間なのである程度水がたまった状態が基本状態だったりします。
裏技的に艇をひっくり返さずに水抜きできるビルジポンプという道具もあります。大きく邪魔ではありますが、オープンなら持ってても良いモノでしょう。
水抜きする余裕もない瀬の連続では気付けばお風呂状態なんてこともままあります。
同じオープンデッキなストレウスを買ったぼくがポントの肩を持つような言い訳をすると。
水抜きする手間を休憩と考えればいいですし、瀬の連続するような激しい川は避けるようになると考えればいいのです。
軽量シンプル安定感抜群で安価なオープンデッキだし川下りがちょっと苦手位がパックラフトらしいんですよ。それにオープンデッキで下れないような川はレベル的に足りてないですし正直怖いです。
ガンガン川下りをする友人がいないならオープンデッキで川下りをしてて困ることは少ないはずですし、オープンデッキに文句を言うよりも技術を磨いたほうが有意義でしょう。
浮力の塊なパックラフトが沈むことはあり得ないので上から落ちなきゃいいんですよ。
沈
安定性の高いフラットな底は横幅91cmがあり、傾ける操作も大変でわざと沈をするのも一苦労。
「パックラフトって落ちたりしないの?」とよく聞かれますが、初心者でも静水なら狙わないと落ちることはありません。
それでも川下りをしていけば沈はするものです。
沈したときにオープンデッキタイプのメリットは脱出の手間がいらないこと。
デメリットは艇から放り出されるためパックラフトだけ流されやすいことです。
中に水が入りにくいのでひっくり返った後に起こしやすく、再乗艇(落ちてから乗り直すこと)もしやすいのもオープンデッキ。
積載性
ポントはパックラフトらしく何でも載せることができる圧倒的積載力を持っています。
1泊キャンプ装備も余裕ですし、生地的な不安はありますが自転車を積むのもいいでしょう。
そんな荷物を積みながら寝転がった姿勢で乗ることができます。
強いて言うならグラブループが少なく、船首側に4つしかないので積み方に工夫が必要ということです。
Pontoまとめ
畳めばこのサイズで2.9kgしかないのがポント最大の魅力です。
この収納サイズながら膨らませば254×91cmの広めな艇で、安定感は抜群で積載力も高め。
がんばれば大人二人も乗れちゃうし、子供やペットと乗るなら余裕がありそうです。
細長くパッキングすればバックパックに載せての移動もしやすく、歩いてしか行けないポイントへのアクセスも容易でまさにパックラフトでしかできない遊び方ができます。
乗れば広く快適で天気の良い日なら水に浮いてるだけで楽しいパックラフト。
ただ積極的な川下りには物足りない、という艇。
形状や操作性にも癖が無くパドルスポーツ未経験者がいきなり乗っても全く問題が無いであろう一番初心者向けなパックラフトと言えます。
可愛いデザインで男女共に選びやすく、湖位でしか乗らない人にもいいですし、簡単な川下りなら全く問題ありませんし、子供と一緒に乗りたい人にもいいです。
それでいて自転車や徒歩でアクセスしていきたいゴリゴリアウトドアマンにもマッチするモデルなのです。
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MRS Microraft S
初心者向けではないし、オススメしてる人も見たことが無い何だか手が出しにくそうな印象がある簡易スプレーデッキタイプのパックラフト。
沈したら脱出できるか心配
水の侵入を完全に防げるわけでもない
デッキは外せるけどならオープンデッキでいいよね
というネガティブな目線で見ると非常に中途半端で魅力を感じないタイプだったりします。
使用感がイマイチわからないまま使ってみたら、個人的には4艇中一番遊べる艇でした。
快適性
快適性をどうとらえるかではありますが、艇の広さや乗り心地で言えばマイクロラフトはかなり窮屈です。
内側サイズが一番狭いですからね。
足を伸ばそうにも足先が艇にぶつかるし、膝も少し曲げたら上のカバーにぶつかる。
さらにスプレーデッキもあって腰回りは動きにくいしほんと窮屈。
性能云々よりも広くて快適なのがパックラフトだと思ってると窮屈な時点でアウトなのではと思っちゃいます。
膝を曲げたらスプレーデッキに当たって踏ん張りは聞くようになりますが、曲げきることは出来ずに窮屈。
ならデッキの無いタイプにサイストラップを付けたほうがいいなと思うわけです。
狭いならスプレーデッキを外せばいいじゃないと思っても、外しても他モデルと比べるとかなり狭め。
といってもパックラフトの中では狭いモデルであって、カヤックと比べればこれでもかなり広いはずではあります。
保温性
窮屈なスプレーデッキですが、あるとめっちゃ暖かいんですね。
初夏に乗ったので恩恵は薄かったですが、夏でも水温が低い北海道ではスプレーデッキの暖かさは救いでした。
水を浴びないから暖かいのもあれば、閉鎖された内部が暖かくなるのもあってそれはもう暖かくなります。
冬の釧路川をパックラフトで下りながらキャンプ・・・といったエクストリームな寒い環境を考えるなら真っ先に考えたいのが簡易スプレーデッキタイプでしょう。
川下り用だと思ってたスプレーデッキも、静水+寒い時期にも活躍するわけで川下り以外でも幅広いシーンで活躍するモノなことに気付きます。
そういう意味で遊べる幅が広がる面白いパックラフトだと思います。
乗り降りの手間
ぼくが一番気になるのは乗ってから漕ぎ出すまでにスプレーデッキを装着する手間です。
水のキレイな上流域だと頻繁に上陸したいわけですよ。何なら数分毎です。
そんなときにベルクロを剥がして、カバーを手で押さえながら跨ぐように足を出して、乗る時はベルクロを剥がして、片足ずつ乗り換えて入って、ベルクロを固定して、腰回りを整えて、ドローコードを締めてと・・・本当に面倒。
パックラフトの魅力である手軽さがそがれてしまう本末転倒な部分です。
直進性
ストレウス | Ponto | Microraft S | Viking Self Bailer | |
全長 | 240㎝ | 254㎝ | 250㎝ | 269㎝ |
全幅 | 93㎝ | 91㎝ | 85㎝ | 92㎝ |
全長/全幅比 | 258% | 279% | 294% | 292% |
ぼくの考えた謎計算でパックラフトの“全長/全幅=%”で出す全長/全幅比と言う数値があるんですね。
%が高いほどに細長く直進性があがるんじゃないの?っていうものです。
この全長/全幅比的には4艇中マイクロラフトが一番速度が速い計算になります。
では実際はどうなのか。
実際はポントと同程度の速度で、バイキングがさらに速かったです。
そううまい事計算通りには行かないもんですね。
おそらくマイクロラフトSの全長250cmはパックラフト的には標準で長くはないし、ポント(254cm)よりも短いんですね。
比も大事だったけど、やはり全長がある程度無いとダメなのかなと思う結果でした。
それでもポントと同じくらいには早くてスケグ付きで時速4km位でした。
操作性
マイクロラフトは操作性がめちゃくちゃ良いです。
他よりも外幅が狭いため左右への動きが特に良いと感じました。
小回りも利くし、膝がスプレーデッキで抑えられることでサイストラップ無しでもそれなりに体で艇を傾けることができて動かしやすいんです。
窮屈も裏返せば動かしやすいという話。
そして左右へ傾けやすさは安定性の低さって意味でもあったり。
ポントのドーンとして安定感に比べると、ややスリリングさながらスポーティさを感じられる艇でした。
操作性が良いからと言ってエディキャッチが上手くなることも無い初心者ですが、動かしやすいと乗ってて楽しいですね。
だからぼくはポントよりもマイクロラフトに乗ってた時間が長いです。
幅の狭さはパドリングのしやすさにも繋がります。
パドルが本体をかすめやすい幅広なパックラフトが多く、他モデルが90cm以上ある中で幅が85cmのマイクロラフトではパドルが本体に当たることは非常に稀でした。
当たらなくなって気付く、当たってたのがストレスになってたことを。
乗ってしまえば非常に快適なのがマイクロラフトです。
川下り
簡易スプレーデッキ+操作性の良さで川下り向きに思えますが、ロッカーがあまり入ってないのがマイクロラフトの欠点。
それでもポント同様に進化して反り立った感じの形状で水は切り裂いて抵抗を抑えてくれる形状とのこと。
波に当たった時もポントと似てて弾かれる感じです。
オープンデッキのポントと違うのは、自分がデッキで固定されてるので安定しやすいことですね。
ではマイクロラフトも川下りに向かないのかというとそうではありません。
沈脱出と出入りにハードルの高さを感じてしまってたけど、カバーを付ければ暖かく水の侵入を防げる簡易スプレーデッキタイプのパックラフトをぼくはかなり好き。 pic.twitter.com/Wro9E2kTH3
— ぜつえん (@zetuenonly) June 11, 2022
マイクロラフトは落ち込みでこれだけ上から水を浴びても浸水は少なめ。
沈しちゃいそうなほど傾きやすいのも、立て直しやすいのもマイクロラフトだからこそ。
ロッカー形状じゃないのが川に弱いとこですが、オープンデッキよりもはるかに川を下りやすいモデルです。
スプレーデッキと沈
パックラフト初心者が簡易スプレーデッキタイプのマイクロラフトを買うので一番躊躇するであろう沈脱出の怖さ。
結論から言うと「気にしなくて大丈夫」
理由は3つ。
・スプレーデッキを外せばオープンデッキ
・腰を緩めればベルクロを外さずに脱出可能
・慣れればオープンデッキよりも艇を流しにくい
慣れてなかったり、怖い瀬が現れたらスプレーデッキを外してしまえばほぼオープンデッキです。
沈すればポントのように放り出されるだけで脱出の手間なんてものとは無縁になります。
ジッパー2本とベルクロを外すだけで変更出来るので、スカウティング段階で外すのもいいでしょう。
もう少し慣れてきたら腰のドローコードを絞らず緩めにして置けばベルクロを剥がさずに脱出することができます。
ぼくは沈しそうな怖い瀬の手前ではドローコードを緩めておき、最悪ベルクロを剥がすツマミが見つけられなくても脱出できるようにしてます。
腰を緩めておいて沈するとPFDの浮力で体が横から上がってきます。ぼくは手を伸ばして艇の底を持って体を上げて顔を出してからお尻、足を引っ張りだしてます。
ぶっちゃけベルクロを剥がせるならそっちのほうが脱出しやすいんですが、流れの中では上手につかむことができない可能性もあるので慣れるまでは緩めておくと安心です。
MRS マイクロラフトのスプレーデッキのドローコードを緩めておくとベルクロを剥がさずに脱出できるやつ pic.twitter.com/D8WAp5uo3a
— ぜつえん (@zetuenonly) June 13, 2022
ドローコードを緩めて這い出る脱出シーンの動画。
脱出が手間なのはメリットでもあって、放り出されるオープンデッキと違って沈時に艇をつかみやすくなります。
瀬の中でも掴みやすいのでパックラフトを掴めず流すことが激減します。
パックラフトを流しちゃうと急いで陸まで泳いで走って追わなきゃいけなくて一大事になります。
そのリスクが軽減するのはかなり大きいです。
これは欠点ですが、再乗艇時にデッキが邪魔になりがち。
流れが続いてる中での再乗艇ができてもデッキ内まで入り込むのには時間がかかってすぐに漕ぎ出すのも厳しいです。
簡易スプレーデッキのMRS MicroPackraftでベルクロ剥がして脱出して再乗艇するやつ pic.twitter.com/d0BJkCAxaV
— ぜつえん (@zetuenonly) June 13, 2022
ベルクロを剥がして脱出してから再乗艇するまでを頭に付けたinsta360 ONE RSで撮った動画。
お腹前のエアフロートがあるおかげで沈→再乗艇したあとの浸水量は少なめです。
積載性
荷物を積む上で気になるのは浮力の低さ。
Sサイズでは積載重量は推奨83kg(最大113kg)です。
川下りメインなら気になりませんが、キャンプに行くような荷物たくさん積んでいきたいときに幅が狭くなっちゃう気がします。
実際ポント(102kg/138kg)と比べても、同じような積載でも沈み方が深く、重くなるほどに操作性が落ちるのを感じます。
161cm60kg程度のぼくが選ぶなら積載量と快適な広さを求めてMサイズ94kg(131kg)にしそうです。
Microraft L
友人が購入したLサイズのマイクロラフトにも乗せてもらいました。
Sよりも確実に広く感じる艇内ですが、それでもオープンデッキに比べると窮屈感は拭えませんね。
広く長くなるほど操作性が落ちるためトレードオフです。
XS-Lでサイズが変わった時の幅や長さがかなり刻まれてるためそこまで差が無いのが理由です。
百何十グラム程度の軽量化を求めるわけでなければサイズは大きいほうが快適だと思います。
ぼくならMサイズにISS付けて、カスタムカラーで赤×黄にしようかなって感じですね。
Microraft S まとめ
他タイプよりも川下りまでに練習が必要なこと、スプレーデッキのメリットデメリットが目立つ癖のあるパックラフトと言えます。
ポントと比べると万人におすすめすることは出来ないのは事実です。
それでも、
川下りに向いてる(操作性とスプレーデッキ)こと。
スプレーデッキの保温力で寒い時期に使いやすいこと。
スプレーデッキを外せば軽量シンプルパックラフトとしても使えること。
オープンデッキよりも対応できるシチュエーションが多く、アクティブなアウトドアマンほど使ってうちに有難みを感じていくことが想像できます。
悪く言えば中途半端、良く言えばハイブリッドな簡易スプレーデッキタイプのマイクロラフト。
ぼくはポントよりも操作性の高さが楽しくて遊びの幅が広がりそうで好きでした。
MRS Viking Selfbailer
4艇中最も激流な川下りに向いたセルフベイラー(自動排水機能)の付いたモデル。
フロア全面がマットに覆われ、5点固定のサイストラップが付き、スタイリッシュでタフな黒い生地が使われた他3艇とは方向性の違うパックラフトです。
快適性
内側136×34cmでスペック的には広めですが、サイストラップがあるのと、船首側が細くなってるため解放感は少なく感じます。
そして静水でも必ずお尻が濡れるため広さでは無く、濡れ度的に快適性はやや低め。
水温の暖かい時期なら大して問題にもなりませんが、寒い時期になってくるとドライスーツが必要だったり、あっても厳しい時期はありそうです。
南北に長い国なので北海道には不向きだけど、関東では問題ない、なんてこともあるのでしょう。地域差もパックラフト選びでは意識したいです。
内長(136cm)は長いですが先細りな形状でポントやストレウスほどの解放感は少なめ。
セルフベイラーモデルは川を下りやすいように細身で作られることが多いためでしょう。
でもまあ窮屈ながら静水では大人二人が乗れてしまうわけで、その程度の広さと浮力はあります。
ただ形状的に左右への安定感が激減するため大人+小さい子供が限界ですね。
直進性
全長269cmという長めなサイズはそのまま速度の速さに繋がります。
スケグを付けた静水では5-5.5km位の速度が出ました。
ただ1時間その速度で漕ぎ続けるのも大変で実際の時速はもう少し落ちるんですがそれは他も同じ。
4艇で比べると一番速いと感じるモデルでした。
常に浸水してしまうセルフベイラーは漕ぎ味が重いと思ってましたが直進ではその影響は少ないと感じました。底にあるフラップが活躍しているんでしょうね。
サイストラップと合わせて、先端にあるフットレストのおかげで踏ん張りやすく力強く漕ぐことができてるのも速度に関係しているはずです。
オープンデッキの場合はザックや防水バッグを詰め込めば踏ん張ることができるようになりますが、標準装備でフットレストがあるのはありがたいです。
操作性
バイキングの操作性は2つのポイントがあります。
・5点固定サイストラップによる傾けやすさ
・浸水による本体の重さと操作性の低下
・船尾が長く操作性が落ちてる気がする
1つ目はメリットで、2目はデメリット、3つ目はややデメリットです。
まず5点固定のサイストラップ。
オープンデッキについてくることは少なく、どのブランドでも別売りで5000-10000円します。
「必要になれば買えばいっか。」と言って結局買わないやつですね。ぼくがストレウスでそうでした。
が、付けてみると「川下りするなら必須だろこれ」と思えるほどに艇に力を込めることができるアイテムです。
サイストラップのおかげで川下りでの操作性も格段に上がってるのを実感します。
フットレストで踏ん張れるのも合わせて力強い操作が出来てるのがわかります。
5点固定サイストラップも合わさることで残りの欠点を帳消しにして、さらに操作性は良いと感じられるパックラフトです。
ただサイズが小さいクイックな動きのマイクロラフトに比べると全長がないためか少し劣る操作感です。
セルフベイラーは、自動排水機能とは名ばかりの穴であり、常に浸水し続ける諸刃の剣でもあります。
体重積載量で変わりますがマットをめくると10cm位は常に水が溜まってる状態です。
その分、他モデルよりも喫水(きっすい)が深くなるため水の抵抗が増えて回転するような操作が特に重くなってる気がします。
水面に浮いてるオープンデッキに比べると動きが重い感覚がありますが、“動きにくい”ではなく、“安定感がある”という体感です。
特に暴れん坊なストレウスは操作性というか動きが軽すぎで回転しすぎてしまい川下りでは不便です。
これは未だ検証中で、不確定要素の大きい話。
バイキングは船尾が大きくなってる分、川下り中の回転やエディキャッチのタイミングなどで引っかかる感覚がたまにありました。
ただ静水で友人が乗ってる姿を見てみると全く引っかかってなかったんですね。
船尾形状を比べるとバイキングが大きいのは一目でわかりますが、同時にやや上向きになってるのがわかります。
だから、長いけど引っかかりにくいのかなと思いました。
ただ瀬や艇が傾くエディキャッチのようなアクティブなシーンでは船尾が突っかかるシーンもたまにあるんだと思う。というのが現状です。
技術的に意図的に引っ掛けることも出来ず、ましてや自分が乗ってみることもできないのでイマイチよくわからない部分です。
それでも269cmというやや長いバイキングは161cmのぼくには少し大きいパックラフトなのは事実なんだろうと思います。
川下り
4艇中一番川下りに向いたモデルで川を下るのに使って一番楽しいと感じるモデルでした。
乗り比べるほどに水上での使いやすさが他モデルよりも一段上です。友人と乗り比べてもバイキングの取り合いになるほど。
理由はざっくり4つ。
・浸水しても底から抜けていくこと
・ロッカーが入ってること
・常に浸水して安定性が高いこと(喫水が深い・重量が重くなる)
・操作性が良い(5点サイストラップ・左右への傾けやすさ)
セルフベイラーなので常に水が抜け続け、水がいくら入ってきても水抜きの必要がありません。
そのためポーテージが必要無ければ川に入ってから出るまで一度も降りずに下りきれます。
水抜きが必要無いとソロ的には、やる気があって川下りをしてるときに水抜きを意識しなくて良いのが楽。
グループ的には、個々の浸水度を気にする必要が無く同じテンポで下り続けることができるためソロ以上にメリットが大きく感じます。
ストレウスに比べると控えめながら、ポントやマイクロラフトよりは確実にロッカーが入ってます。
瀬に当たった感覚もしっかり水を受け流してくれてて川下りで問題を感じるシーンはありません。
浸水することで喫水が深くなり艇の重量も増しますが、それは流れの中での安定する要因にもなります。
水の上を漂流するかのように流れていくオープンデッキやスプレーデッキモデルは弾かれやすく、瀬では浮かされやすい欠点があります。
対して、喫水が深く本体が重いバイキングは重心がやや水中に近くなり弾かれにくく、水と一緒に流れてるような感覚があります。
そのため他タイプよりも安定しやすいです。
川下りを想定したセルフベイラーではサイストラップが標準装備されます。
それは川下りではサイストラップがあるべきだからです。
バイキングには足を乗せるフットレストがあるのも川下りに向き理由ですね。かなり便利です。
重量
パックラフトと言えば“3kg”位が基準重量です。
他3艇はその前後でした。
一方バイキングは4.4kgもあってかなりのヘビー級パックラフトと言えます。ストレウス比(2.8kg)で1.57倍の重量ですからね。
重くなることでパッキングして移動する用途に弱くなるというパックラフト的には本末転倒な仕様になってしまいます。
軽くて持ち運びやすいはずのパックラフトなのに重いという。
もちろん収納サイズも一回り大きくなるわけで携行性は悪くなります。
他モデルに比べるとやや長めで269cmもあるバイキング。
15-20cm長い程度ですが格段に持ち運びにくいと感じます。ポーテージ的な移動性も他より一段下です。
中に水が溜まってしまうセルフベイラー。
水から持ち上げれば底の穴から勝手に抜けていくわけですが多少の時間はかかります。するとオープンデッキのように“水から持ち上げてすぐ担ぐ”ができません。
浅瀬やキレイなポイントの連続するポーテージを頻繁に行う川ではかなり手間です。
降りることの少ない川なら激流でも静水でも得意ですし、重量の重さを感じることもありませんが、担ぐシーンが増えるほどに使い勝手の悪さが出てきてしまうバイキングでした。
水が溜まる、という話の延長で水上に小さな浮遊物があるとそれも入ってきます。
写真ではダム湖に川が流入してる場所にたまった木くずが逆流して入ってきてしまいました。
多くの人が使うのはキレイな水辺がメインだと思いますが、絶対沈したくないような水質の場所でも水が逆流してしまうのはセルフベイラーの欠点ですね。
保温力
逆流と似たような話。
物理的な穴が開いてる以上どんなに静かな水の上でも浸水を避けることは出来ません。
真冬だろうがお尻の下には水が溜まっているのでオープンデッキ以上に濡れを避けるのが困難です。
ちょっと乗るだけだからと濡れる想定をしてない服装で乗っても濡れるわけです。
流れの全くない場所で漕いでるだけならマットの下までしか浸水せずに意外と濡れないのですが、マットが水を吸い上げ常にウェット状態ですし、傾いたタイミングでお尻が濡れることになります。
アクティブな道民的には寒い時期の湖や川も攻めたかったので濡れ必須なセルフベイラーを避けて、オープンデッキのストレウスを選んだ経緯もあります。
Viking Selfbailerまとめ
セルフベイラータイプであり、しっかりしたサイストラップが付いてることで川下りでは圧倒的な力を発揮するバイキング。
静水でも速いため水上では他よりも快適です。
ただし、本体は重く畳んでも嵩張り、濡れ必須で他モデルよりもパックラフト的な魅力が弱いモデルです。
それでも15-20kgあるカヤックに比べればはるかに軽量で十分背負って持ち運べる重さです。
そんなバイキングは川下り・水上特化モデルと見るとわかりやすいでしょう。
水上に浮かべてる間は一番便利だけど、持ち運び担ぐシーンでは他モデルに劣るからです。
徒歩や自転車での移動を想定している人や川下りよりも静水がメインの人には向かないモデルで、手軽に遊ぶよりもがっつり遊ぶのに向いているのも他モデルとは毛色が異なります。
背負って持ち運ぶことと川下りの両立を考えるならより軽いセルフベイラー艇も検討すべきです。
逆に軽いセルフベイラーよりも生地強度が高く、重量による安定性が高いバイキングはガンガン川下りをしたい人にオススメ。
初めての1艇を選ぶ時にオープンデッキと悩むセルフベイラータイプの中でもより川下り向きで、積極的な川下りとパックラフトの手軽さを両立したい人が選びたいバイキングです。
GRIFFONRAFT ストレウス
ぼくが最初の1艇に選んだグリフォンラフト ストレウス。
他ブランド艇と比べにくい癖の強い仕様と使い勝手ながら、現役探検家が開発しただけあって複合的な遊び方をするほどに使い勝手の良さに気付かされる万能型のオープンデッキモデルです。
別記事でレビューを書いてますので、サクッと書いていきます。
快適性
スペック的にはポントよりも広い内部で誰が乗っても広々快適だと断言できます。幅的には広すぎると感じるほどに。
直進性
ストレウスのスケグ無しの直進性は「え、直進?回転することかい?」ってくらい進みません。
そのためかMRSよりも大きいスケグが付属してますが、MRS3艇と比べるとスケグを付けても直進性は一段下。
過度なロッカーのため、船首に荷物を積んでないとウィリー状態になるのは原因の一つだと思ってます。逆に荷物を積んだほうが安定してきます。
漕ぎやすさ
幅が93cmと一番広く、体感で側面チューブが高く感じていてパドルが漕ぎにくいです。
回転しやすいパックラフトは艇横を漕ぐことで直進しやすくしますが、ストレウスはやや外側を漕ぐ意識をしないとパドルが艇にぶつかってしまいがちです。艇本体とDカンに当たることも多いです。
そういうモノかと思ってましたがMRS3艇と乗り比べてストレウスが特に漕ぎにくい事に気付きました。
広ければ快適だけどその分漕ぎにくくなるということなのでしょう。
テープ問題
個人的にストレウスの一番の欠点は黒いテープに指の爪が引っかりやすいこと。
普段は引っかかる程度ですが、川下り中のような力を入れて漕いでる時は血が出ることもあるほど。
見比べるとストレウスがテープを使ってる場所にMRSはテープを使ってませんでした。
引っかかるストレウスを知ってる分、引っかかりやすい部分だから広めに余裕を取ってるのかなと思ってしまいます。
手袋を履くことで引っかかり防止は可能ですが、夏ほど手袋はしたくないものです。
操作性
ストレウスは幅広ながら有り余るロッカーで回転性が良く、何なら動きが軽すぎて進んでる感覚はなく回ってる感覚が強いです。
下流を向きたい中で左右への操作が求められる川下りでは回転しすぎて流れの中で進路へ向かうのが苦手なパックラフトと感じます。ただ異常なロッカーのおかげで流されにくく頑張って進むことができもします。
ただサイストラップがあっても幅が広く安定性が高すぎて艇を傾けるのは大変で川下りではマイクロラフトやバイキングにははるかに及びません。
それでもポントよりは川下りで使いやすいです。
Dカンたくさんでサイストラップ自作も可能です。
ぼくはカメラの三脚収納袋やカメラバッグに付いてるベルトを流用してサイストラップとして使ってます。
バイキングのサイストラップに比べると固定力ゆるゆるで、純正よりも固定力は低いんだと思いますが、それでも川下りは格段にしやすくなります。
ストレウスで川下りを想定する人で、自作難しそうだなって思うならサイストラップも一緒に買うべきです。
川下り
静水で乗ってもウィリーしてしまうようなロッカー具合
自作しやすいサイストラップと操作性
この2つがストレウスが川下りに強い部分です。
川下りに強いバイキング以上に反りあがった船首は、川の落ち込みや高い瀬で絶大な力を発揮します。
瀬に当たった時も水がロッカーに当たって船底へと受け流されるため、船内に水が入りにくく、ポントよりも水抜きの手間が少なく済みます。
オープンデッキで漕ぎにくい広さが川下りに弱い部分です。
そして高すぎる回転性で同じ向きへ安定して進みにくいのも使い比べた時に不便なことに気付きます。
川下りに強いモデルに比べると好んで川下りに持ち出すことも無くなってしまいます。
とはいっても、圧倒的な浮力を持ったパックラフトなので適当に流されてれば川下りを達成できてしまうわけですし、よほど難しい場所じゃないとストレウスで川下りが厳しいと感じることは少ないはず。
積載性
ストレウスはDカンがたくさんついてるため荷物の積みやすさがダントツ。
自転車を乗せるのも簡単ですし、レスキューロープを通す位置も、バックパックや小物の外付けなども困ることはまずありません。
釣り用のテーブルやロッドホルダーを付けるといった拡張性もあり、どんな遊び方にも対応してくれる遊び人のためのパックラフトです。
ストレウスに乗ってしまうと他のパックラフトのループの少なさ、グラブループの使いにくさに物足りなさを感じることは間違いありません。
ただISS(内部ストレージ)などを付けられないのは不便です。
ストレウスまとめ
4艇中最軽量2800gで、広い艇内で荷物が載せやすく外付けもしやすく、流水にも強い、静水用に大きなスケグも付属、二気室でパンク時のリスクも軽減されてる。
メリットを書き出すほどに万能艇であることがわかってきて「ストレウスでいいじゃん、いやストレウスが良いじゃん!」となってきます。
ストレウスしか使ったことなかった頃のぼくは何にでも使えるから初めての1艇におすすめ!という記事も書いてます。
それほどにストレウスで出来ないことが無いシンプルなパックラフトの上位互換という印象です。
ただ特徴の違う4艇を使い比べてみると、全てに使えるけどどれにも特化してない器用貧乏なパックラフトだと感じるようになりました。
静水にも流水にも中途半端ですし、軽量シンプルで手軽なはずが二気室で準備片付けが面倒で、広すぎて漕ぎにくいからです。
それでも、そもそも静水も流水も中途半端で軽くて手軽なのがパックラフトという道具だと思い出せばパックラフト自体が器用貧乏な乗り物なのです。
そんな器用貧乏さに性能を振ったストレウスは究極に器用貧乏な艇と言えます。もちろん最上級のほめ言葉ですよ。
どんな遊び方にも使えるけど、どの遊び方にも特化してない。
だからこそ、自転車×川下り×釣りや川下り×湖×キャンプ×担いで歩くのような複合的な遊び方になってくるほど器用貧乏な対応力が強みになると思います。
色んな使い方をするほど“探検家が考えた”のをわからせられる何にでも使える便利さがストレウスの魅力です。
総合評価
長くなりました。ラストスパートです。
★5段階で性能を評価しました。★が多いほど良いという意味です。
絶対評価でもなく、お互いを比べた4モデルでの相対評価です。が「こんな感じだな」程度です。
★が多ければいいわけでもなくて、自分の用途に合うかどうかが大事だと思います。
水に濡れたくないし、川下りをしないのにバイキングを選んでも意味ないですからね。
タイプが違うので当たり前に場所での使い勝手は異なるため、比較対象としては正直微妙でしたね。
同じ目線で比べられるのはストレウスとポントだけだと思います。
でもまあって話をするとパックラフト複数持ちなんて稀であって、1艇目を選ぶための知識が全てです。
そういう意味ではタイプ別の比較は同タイプでの比較よりも初心者向けだったと思います。
異なるタイプで比べることで自分にはどのタイプが向いてるかがわかってくるかなと。
書いてて自分はオープンデッキか簡易スプレーデッキだなって思いましたし。
川下りやすさと重量のチャート。
上ほど川下りに向き、右ほど重いモデルです。
並べてみるとわかりやすいですが、川下りに強いモデルほど快適性と軽量性が削られていく傾向にあります。
逆にオープンデッキのポントやストレウスは内部が広く、快適性が高く軽いパックラフトらしいパックラフトに仕上がります。
さらに軽さに特化するならMRS Tulo(2270g)やグリフォンラフト エクスプローラー(2100g)などの選択肢も出てきますが、静水流水共に弱くなり積載もしにくくなるだろうことが想像できて、万人向けでは無くなるのでしょう。
パックラフトの選び方
最後にパックラフトの選び方。
非常に高額なのに情報が少なく、選ぶハードルが高いので年単位で悩む人もいるはず。
結論から言うと、2種類に分けた中から自分に適したタイプを選べば失敗はほぼ無いはずです。
2種類のパックラフト
パックラフトは4種類(オープンデッキ・簡易スプレーデッキ・スプレーデッキ・セルフベイラー)のタイプに分けられますが、多いので2種類に分けちゃいます。
川下り専用系とそれ以外です。
パックラフトでわかりにくいのは静水と流水という言葉が使われるからだと思うですね。
ぼくが言い換えるなら川下り専用とそれ以外というわけです。
静水用と書かれてても、よほど軽量性を重視したパックラフトでなければ川下りが出来ないなんてことはありません。川、下れますよ。
空気の塊で、存在が浮力なパックラフトなので乗ってるだけで川を流されます。パドルがあれば方向を変えられるわけで、オープンデッキだろうがセルフベイラーだろうが上流から下流に流されます。
艇のタイプで川下りに使える使えないを考えるよりも買った艇で下れる技術を磨くほうが確実です。
それでも川下りをメインにやりたい、ステップアップしていって激流を下るつもりな人が選ぶのがセルフベイラーやスプレーデッキの川下り専用系です。
MRSならバイキングやアリゲーター2S、グリフォンラフトなら新発売したラルガとなります。
しかし、川下りに強いモデルになるほどにパックラフトらしい解放感や軽量性、行動力は減っていくという認識はしておくべきです。
なので初めての1艇でどれにするか迷うなら川下り専用以外のオープンデッキや簡易スプレーデッキが無難だと思います。
遊ぶのがソロの予定ならそれ以外がおすすめで、川下り専用系は特に川下りがしたい人向けです。
迷うけどという人で、遊びに誘える友人に川下りに慣れた人がいるなら川下り専用系もアリ。
人がそろえば遊び方がエスカレートしていきがちですし、数人での川下りで水抜きは非常に面倒です
つまりは、川下り専用系にするかどうかがパックラフトの選び方です。
そこから選び間違えなければオープンデッキだろうが、簡易スプレーデッキだろうが、どれを買っても大きな後悔はないでしょう。
川下りモデルは下って楽しい
川下りをするなら川下り専用モデルが機能的に使いやすく向いている、のは当たり前なわけですよ。それ用ですからね。
でもね、遊びとしてパックラフトを選ぶぼくらにとってもっと大事な要素があるんです。
そう、川下り専用モデルで川を下ったほうが明らかに楽しいんですよ。
操作性もありますし、瀬に乗った時の安定感もですし、フットレストやサイストラップでのフィット感も楽しさの要因でしょう。
ストレウスとバイキングで川下りに行ったらバイキングが取り合いになるほどです。
ポーテージが少ない場所へ行くならぼくは間違いなくバイキングを選びます。逆に釣りや自転車も想定するならストレウスですね。
川の楽しさ順にすると、バイキング>>>マイクロラフト>>>ストレウス>ポント、という感じでしょう。
デザイン
元も子も無い話ですが見た目は大事です。
2~3種類まで絞り込んだなら見た目で選んで後悔はしないでしょう。性能や重量の誤差よりも好きになったパックラフトに乗ることのほうが楽しいからですね。
原色単色が多いですが、形状やデッキの有無、ISS(内蔵ストレージ)でもかなり見た目が変わってきます。
カスタムカラーを選べるブランドはさらに好みに合わせやすいです。
だから見た目は重視してください。
値段では選ばないで
「ただのゴムボートなのに高すぎ・・・」
何回思ったかわからないパックラフト高すぎ問題。
頭おかしいくらい高いじゃないですか。
セルフベイラーになれば15-20万コースで、多くの人がオープンデッキを使ってて、そもそも他の選択肢が無いんだろうなってこともわかります。
それでも言いたいのは値段で選ぶなということ。
「安いからポントでいいや」は絶対面白くならないですから。
人の財布にとやかく言える筋合いもないんですが、それでも「本当はセルフベイラーが欲しいけど高いからオープンデッキにした」なんてことだけはやめて欲しいんだ。
他の遊びでもそうだけど遊びだからこそ本気で悩んで本気で選んで欲しい。
マイクロラフトかオープンデッキか
ちょっと選びにくいけど、ぜつえんが良いと言ってるマイクロラフト。
最後にマイクロラフトと悩むのはセルフベイラーではなくオープンデッキだと思います。
川下りよりも静水向きながら狭い艇内はデッキを外しても解放感はオープンデッキに届かず中途半端感が気になります。
操作性とスプレーデッキで川下りがしやすく、寒い時期も対応し、デッキを外してオープンに使うこともできるマイクロラフト。
多少の快適性を犠牲にすることで静水と流水よりも幅広い環境に対応することがしやすいパックラフトだと思います。
色んな時期に色んな遊び方を色んな方法でするようなアクティブな人が使うほどに面白くなるであろうパックラフトが簡易スプレーデッキタイプのマイクロラフトだと思います。
雪景色の中をパックラフトで移動するようなシーンを想定するなら真っ先に考えたいモデルだと思います。北国の人ほどおすすめしたいですね。
ポントかストレウスか
比較した中で同じオープンデッキタイプだったポントとストレウス。
サイズも近いためどちらがいいのか、どちらを選べばいいのかという話。
パックラフトらしい軽量性とシンプルさが売りのポント。
・カスタムカラーを選べるデザイン性
・ISSの追加
・湖や緩やかな川での漕ぎやすさ、乗りやすさ
・軽量性(2900g)と収納サイズの小ささ
・一気室の使い勝手の良さと手軽さ
・値段の安さ
この辺りに魅力を感じるならポントがおすすめ。
癖の無い乗りやすさ、使い勝手の良さ、静水域での使用ならストレウスよりも快適です。
もちろんがっつり川下りも行けますが、性格的にガツガツ攻めていくよりも、ゆったりまったり遊びたい人ほどポント向きです。
様々なアクティブと合わせやすい拡張性の高さが魅力のストレウス。
・Dリングの積載性と拡張性
・川下りに強め
・どんなアクティビティにも対応
・究極の器用貧乏さ
登山をしたら3000m峰も目指すし、トレランもしたい、自転車に乗れば峠を攻める、キャンプならブッシュラフトもハンモック泊もタープ泊もしたい。
パックラフトに乗ったら川下り、バイクラフティングも、釣りも、キャンプも色んなことがしたい。
そんな遊びだしたらどんどんアクティブになっていく人はストレウスがおすすめ。
のんびりまったりな人向きのポントと、アクティブなアウトドアマン向きのストレウス、というのがぼくが思うこの2モデルです。
寒い時期にも乗りたいアクティブな人にはマイクロラフトも面白い選択肢だと思いますよ。
まとめ
前編に続き非常に長くなりました。
こんな違いがあるんだ、自分にはこれが向いてるな、こんな感じで遊びたいな、MRSってこんな特徴があるんだ、ストレウスは尖ってんなあ、そう見てもらえれば嬉しいです。
軽量で手軽なパックラフトが遊び方をどう広げるかは使う人次第です。
しかし買って使わないことには遊び方は広がりません。悩むより買って使ってみて、です。
近くにパックラフトを置いてるお店があるならまずは見に行ってみましょう。
もっと買う気があるならパックラフトツアーや試乗会に参加してみるのが一番です。
MRSならレンタルで試すこともできます。
まずは乗ってみるところから始めてはどうでしょうか。終わり。
前編はこちら
MRSの急流向きスプレーデッキ艇Alligator 2S Proもレビューしてます。
国内外のパックラフト100艇以上を比較できる記事はこちら
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