こんにちわ、ぜつえん(@zetuenonly)です!
川下りならセルフベイラーが定番と言われるパックラフト。
1年以上MRSのViking Self Bailerで川を下ってきました。
スプレーデッキ艇に興味が出てきたところに、ご縁があって2ヶ月ほどAlligator 2S Proに乗って遊んできました。
今回はMRSの高強度スプレーデッキ艇Alligator 2S Proをレビューしていきます。
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MRS
中国四川省で2007年に創業したMRS(Micro Rafting System:マイクロラフティングシステム[小さなイカダ組織])。
パックラフトブランドの中では初期頃に設立した歴史のあるブランドです。
そのため種類も多く、ハイグレードな製品の素材を使っていて、慣れた職人たちが作っているため品質がかなり高めです。
わかりやすい一覧表を出してくれているのも有難い部分です。
KAZESTORE
日本代理店は京都でゲストハウスを経営するKAZE STORE。
店主は元バックパッカーの方で、中国に住んでいた時からMRS創業者がMRS設立する前から親交があります。
見やすい公式サイトではQ&Aも載せてくれてます。
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スペック
名前 | Aligator 2S Pro |
タイプ | スプレーデッキ |
金額(税込) | ¥180,000 |
総重量 | 3750g |
全長 | 255×87㎝ |
内長 | 131×32㎝ |
チューブ幅 | 27.5㎝ |
収納長 | 40×60×30㎝ |
本体生地 | 420D 0.45㎜厚ウレタンシングルコートナイロン |
ボトム生地 | 840D 0.6㎜厚ウレタンダブルコートナイロン |
積載重量 | 131㎏ |
カラー | 3色 |
内部ストレージ(ISS) | 標準装備 |
スケグ | 標準装備 |
グラブループ | 10個 |
サイストラップ | 5点固定付属 |
スペックなんて比較の先にあるもので、パックラフトをスペック表で見てわかる人は少ないはず。
スペックで見たアリゲーター2S Proは
・希少なスプレーデッキ艇
・全長がやや長い(255cm)
・幅が狭め(87cm)
・本体生地が厚い(420D)
・内部ストレージ標準装備はレア
・スケグ標準装備もレア、ただしMRSは全ての艇で標準装備
・グラブループ10個は少し多め
・サイストラップ5点固定はMRSの中で上位グレード
この辺りがスペック表からわかる特徴的なポイント。
実測重量
重量 | |
Alligator 2S Pro本体 | 3,577g |
インフレータブルシート | 182g |
バックレスト | 121g |
スカート | 406g |
スプレイデッキフレーム | 173g |
スケグ | 85g |
サイストラップ左右 | 225g |
ISSバッグ×2 | 184g |
合計 | 4,952g |
カタログ重量 | 3,750g |
パーツごとに本体重量を実測。
驚くことにカタログ値3750gに対して、実測総重量は4952gでした。
最小重量な「本体+シート+バックレスト」なら3880gでカタログ値に近いので、この辺りが表記されてるのかもしれませんね。
Viking Self Vairar(4400g)よりも軽いと思っていたので予想外でした。
個人的に一番期待値とズレの大きい部分でした。
Alligator 2Sとの違い
名前 | Aligator 2S Pro | Aligator 2S |
画像 | ||
タイプ | スプレーデッキ | |
金額(税込) | ¥180,000 | ¥155,000 (ISS:¥173,000) |
総重量 | 3750g | 3230g |
全長 | 255×87㎝ | |
内長 | 131×32㎝ | |
チューブ幅 | 27.5㎝ | |
収納長 | 40×60×30㎝ | |
本体生地 | 420D 0.45㎜厚ウレタンシングルコートナイロン | 210D 0.35㎜厚ウレタンシングルコートナイロン |
ボトム生地 | 840D 0.6㎜厚ウレタンダブルコートナイロン | |
積載重量 | 131㎏ | |
カラー | 3色 | 5色 |
内部ストレージ(ISS) | 標準装備 | ¥18,000 |
スケグ | 標準装備 | |
グラブループ | 10個 | |
サイストラップ | 5点固定付属 | 3点固定付属 |
空気圧 | 1.5-2.5PSI | 1.0-2.0PSI |
スタンダードなスプレーデッキ艇であるAlligator 2Sの強化版がAlligator 2S Proです。
大きく異なるのは4点。
・チューブ生地(420Dと210D)
・ISSの有無
・サイストラップの種類
・空気圧の高さ
バイキングでも使われるMRSの黒い生地は強度の高い420D。その分多少重くなりますが、空気圧も上げられるため激しい川下りではメリットです。
ISSはProは標準装備、アリゲーターは+18,000円のオプションです。
川下りでは必須な膝を固定するサイストラップがアリゲーターは簡素な3点固定(10,000円)、Proはしっかり固定できる5点固定(12,000円)が標準装備されています。
個人的にMRS3点固定は使いにくく、固定力低めで2Sでも5点固定に付け替えたいレベル。
艇の金額差が25,000円ですが、ISSとサイストラップの差を考えると5,000円程度の差であり、ほぼ金額の差は無いと言えます。
そして、生地強度の高いProは少し高い空気圧を入れることができます。
剛性が上がるため、瀬や落ち込みで潰れにくくなり突破力が上がって急流に向きます。
軽さやカラーバリエーションの豊富さを求めるならAlligator 2S。
より激しく快適な川下りをしたいならAlligator 2S Proが良いでしょう。
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特徴
Alligator 2S Proは、数あるパックラフトの中でもかなり特徴的で珍しいモデルです。
これが欲しいからと手を出す艇であり、比較対象もほとんどありません。
そんな特徴を紹介。
固定スプレーデッキ艇
最大の特徴は、スプレーデッキ艇であること。
リバーカヤック同様に腰に付けたスプレースカートを、本体のデッキに囲まれたコックピットに取り付けることで浸水を最大限に防げるモデルです。
Whitewater Deck(ホワイトウォーターデッキ)とも呼ばれ、略してWWと書かれることもあります。
「沈脱のしにくさ」「乗り降りの手間」などの理由から国内では避けられがちで最もマイナーながら、海外では最も定番なタイプだったりします。
川下りに適したパックラフトと言えば浸水を防げるスプレーデッキかセルフベイラーですが、現在の主流はセルフベイラーです。
スプレーデッキ艇における最大のメリットは、浸水を最大限に防げることです。
すると川下り中の水抜きが必要無く、冷たい時期や水でも体が濡れにくく冷えにくいことに繋がります。
デッキがあるため重めですが、最も幅広い環境で使うことが出来る形状と言えます。
欠点は、スプレースカートの着脱で乗り降りに手間がかかること。
狭いコックピット内での解放感の少なさも欠点でしょう。
使うまで心配だった沈脱時の着脱のリスクは、正直気にする必要はありませんでした。
実際使った感想はもっと使う人が増えてもいいのに、と思いました。
濡れにくく、風の侵入も無く暖かいため寒い時期に最適で、動きが重くなりやすいセルフベイラーよりも軽快に川下りができるからです。
少なくともパックラフトで川下り=セルフベイラーの考えはもう無くなりました。
以前乗ったMRSの簡易スプレーデッキモデルMicroraftとも防水性は段違いでした。
Microraftは腰の密着感が甘く、普通に川下りしてるだけで隙間からそれなりに水の侵入がありました。
ISS標準装備
大手ブランドではオプションで用意されてるTIZIPを使った完全防水内部ストレージ。
止水ファスナーとは似て非なる、水没しても浸水のない完全防水ファスナーです。
MRSではISS(Internal Storage System)と呼んでいて、+18000円で各艇に追加でき、防水サック2つも付属します。
そのISSがAlligator 2S Proには標準装備されています。
50cm長の防水ファスナーでパックラフト内部に荷物を入れ、左右のチューブやスターン(船尾)に配置できます。
本体は空気しかないパックラフト内に入れることが出来るため完全防水であり、寝袋やテントや着替えなどを絶対濡らさずに持ち運べる唯一の携行方法でもあります。
内部に防水バッグを固定して置けるループが片側2つずつ付いていました。
ロールトップを通して固定するか、カラビナを付けて固定するか、ですね。
あまりに荷物量が少ないと中で荷物が動いてしまい、逆に不安定になるため注意です。
入れる荷物の量も左右で出来るだけ均等にしてあげると安定します。
パックラフト本体の空気室と一体なため、TIZIPを開けると中の空気が全て抜けてしまいます。
そのため行動中に開けることはまずありません。
逆に、片付けで空気を抜くときにTIZIPを開けば素早く空気を抜くこともできます。
長く力を込めやすいタブが付いてるものの使ってみると、かなり硬めで両手でしっかり力を込めないと開閉できず、頻繁に使うのは大変。
実用シーンで考えると、パックラフトを膨らます前に中に荷物を入れるときに1回の開閉。
宿泊や休憩などコース中に開閉する場合は2回目の開閉。
最後にゴールして片づけるときの3回目の開閉で、最大3回程度で開け閉めの回数は非常に少ないです。
付属防水バッグ70Dコーデュラナイロンのロールトップ。
チューブ内に入るように径が細くパッキングはしにくいです。
容量は34L×2=68L。
パッキングしづらく実用容量はもっと少なく感じますが、内部ストレージだけで数泊のキャンプ装備が運べます。
25L程度のバウバッグと合わせれば数値上は93Lで、積載にはかなり余裕が出てきます。
内部ストレージの無い艇でパックラフトキャンプをすると前後に積む荷物が増えて、視界も操作性もポーテージもしにくくなりがちです。
スターン側にも余裕があるのでバックパックをそのまま入れたり、用意したスタッフバッグに入れた荷物を入れることもできます。
荷物が増えるほどポーテージや車から水辺までの移動が大変ですが、積載能力は圧倒的です。
ISSに15kg程度の荷物を入れてみると左右の安定感が上がり、瀬で跳ねにくくなり、直進安定性が少し上がり、リーン(左右に傾ける動き)は少しやりにくく感じました。
バウ(船首)に荷物を積むと、左右に頭を曲げにくくなってしまいますが、その曲げにくさが無いのがISSの良い所でした。
TIZIPとは・・・
ドイツのファスナーブランドのこと。
ドライスーツなどに使われる防水性、機密性に優れた完全防水ファスナーであり、浸水や空気の流出を防ぐ。パックラフトの内部ストレージにはTIZIP SuperSealが使われることが多い。
ISSは必要か
ISSは要るか、要らないのか問題。
標準装備でない場合が多く、パックラフト購入時に+2万円前後は正直避けたい出費です。
一方で川下り中にキャンプをするなら確実に便利なオプションでもあります。
メリットをあげると
・最大積載量が増える
・完全防水で荷物を運べる
・瀬での安定性が上がる
・バウやスターンの積載よりも操作性や視認性が落ちにくい
と宿泊装備が必要ならばあって損無しです。
後付けも不可能ではありませんが、現実的に厳しく少しでも欲しいと思ったなら付けるべきです。
特に走行性能の高いスプレーデッキ艇やセルフベイラー艇で激しめの川下りで1泊をしたいならあるべきです。
個人的にセルフベイラーのバイキングに何とかして付けられないかと悩んでいるほどです。
後付けが不可能ではないと書いたのは、TIZIP(1万円ちょい)とヒートアイロン(3000円位)を購入し、DIY Packraftを参考にしてパックラフトにハサミを入れ、熱圧着すれば自作出来てしまうからです。
ただ未経験な個人が手を出せる範疇を越えているため現実的に厳しいと書きました。
高強度モデル
MRSが黒い生地を使ったバイキングやアリゲーター2SProは高強度モデルです。
一般的なパックラフトはチューブ210D、フロア840Dが多いですが、黒い高強度モデルはチューブ420Dを使っています。
岩などに当たったときの衝撃や経年での擦れにも強く、少しだけ高い空気圧を入れることが出来るため剛性が上がり、瀬や落ち込みに強くなるメリットもあります。
バイキングには選択肢がありませんが、アリゲーター2SProは、チューブ210Dで少し軽いアリゲーター2Sと選び分けることができます。
ISSが無く、サイストラップの固定力が甘いなどの違いもありますが、強度か軽さかで選び分けやすいです。
欠点は、重量増と視認性の低さと熱膨張しやすさ。
テープのカラーはあれど、ほぼ真っ黒で目立ちません。
MRSの高強度モデルに乗る時はウェア、PFD、ヘルメットなどは視認性の高い物を使うべきです。
熱を集めやすい黒は炎天下で放置しておくと、中の空気圧が上がり一回り大きく見えるほどに膨らみます。
パックラフトがパンクした話は聞いたことが有りませんが、休憩時などは木陰に置いたり、空気圧を下げて置く必要があります。
幅狭め
ホワイトウォーター向きでゆったりよりもスポーティな乗り心地なアリゲーター2SPro。
幅87cmと狭めに作られていて、リーンがしやすく、クイックな動きに向いています。
ぼくの知る限り最も細いパックラフトで幅81cm、99cmあれば相当広いモデルです。一般的なパックラフトで90-95cm幅というところ。
普段乗っているバイキングは92cmでした。
わずか数センチですが、乗れば差は歴然です。
普段幅の広いモデルに乗っている人だと、エディキャッチの時に傾きすぎて沈することも多いほどでした。
5点固定サイストラップの高い固定力も合わさって想定以上に傾けやすすぎるのです。
慣れれば狙った通りの動きができて楽しく気持ち良い艇ですが、ゆったり乗りたい人にはやや不安定なモデルと言えます。
他のパックラフトに比べて必要な練習量も多めです。
スケグ装備
MRSの特徴に、全モデルにスケグが標準装備される点があります。
スターン下に付けることで漕いだときの左右の振れを抑え、直進性に変える役割を持つパーツです。
後付けもできますが、意外とお高くて、標準装備なのは非常に嬉しいです。
色んなパックラフトに乗ってきて思うのは、MRSは直進性の高い艇を作るのが得意なブランドであるということ。
スケグ、長い喫水線(水に接する底の長さ)、水を切り裂くバウの形状がその要因です。
アリゲーター2Sproも全長255cmと長めで、幅は狭め、スケグ付きで速度はかなり速め。
体感ではバイキングと同程度の速度でした。
急流にも強く、静水でも速度が速く、ISSで積載能力も高いとオールマイティなモデルです。
ロッカー(前後の反り)が弱めで喫水(水に触れてる底)が長く、急流よりも直進性の高さを意識した形状で、強いて言うならもっとロッカーを強くしてクイックでスポーティな艇に仕上げても面白いのになと思いました。
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見た目
各部位の見た目。
スプレーデッキ
スプレイデッキフレーム(コーミングポール)です。
コックピットの周囲(コーミング)に通して、スプレースカートを付けるフチを作る役割があります。
白い樹脂ポールは曲がり、黒いアルミポールは曲がりません。
スプレーデッキ艇に乗るうえで必須ですが、長さ約60cmもあり、微妙なカーブで収納しにくくパッキングも持ち運びも大変な困ったアイテムです。正直パドルよりも持て余します。
コックピット周囲がスリーブになっていて、前後が白いポール、左右が黒いポールで4本で円を作るように繋がります。
左右は止水ファスナーで開閉できます。
白いポールを前後に入れ、黒いポールを差し込んでファスナーを締めて固定します。
黒いポールの固定はやや硬めです。
本体から少し浮き上がる位置に丸いコックピットが出来上がります。
外観
膨らませた状態。
シンプルなボストンバルブ+一気室です。
全面真っ黒ボディにテープ部は黄色でスポーティなデザイン。
真横から見て。
船首側にややロッカーがありますが控えめ。とは言ってもバイキングと同程度です。
船尾側にはボリュームがあります。バイキングよりは少なめ。
上部を覆うカバーがスプレーデッキ。
210Dを420Dで補強した生地で全く保水はしないパックラフト相当の生地です
ファスナーで取り外し可能なRemovable Whitewater Deckや、コックピットを作らずにベルクロで腰に巻き付ける簡易スプレーデッキ(Cruiser Deck)も付いています。
パックラフトと同じ生地で水の侵入を防いでくれます。
コックピット。
縦85×横63cmの楕円形。
出入りがここに限られるため、他のパックラフトに比べると窮屈感が強め。
見た目はすごい好き。まさにコックピットって感じです。
バックレストはコの字で背中を支えてくれるインフレータブルタイプ。
バイキングと同じで、フィット感が高くずれにくいので使いやすいです。
シートはオープンデッキでも使われる通常タイプ。
コックピットがあるので狭くて口で膨らますのがやや大変。
スプレーデッキで隠れてわかりにくいですが、5点固定サイストラップ。
中央2点はフック、左右はナイロンバンド、中央をベルクロの5点で固定します。
MRSバイキングで見るとこんな感じです。
足元になるスプレーデッキの内側。
使用していないプラループ付きのグラブループが4つありました。
狭いため荷物を入れるには不向き。
荷物を詰めてフットブレイス(踏ん張るための足置き)にしてもいいなと思いますが、出入りがしにくくなるため考え物。
フットブレイス無しでも、セルフベイラーのようにフルフロアじゃないため、サイストラップ固定時にフロアで足をしっかり踏ん張れます。
スプレースカート
これがスプレースカート。
立体形なので平置きするとよくわからない形状です。
光沢のある部分は70Dを210Dで強化した片面TPUコーティングナイロンで、コックピットに付ける外周は伸縮性のあるネオプレンにゴム紐が入ってます。
ネオプレン生地で素材は防水ですが、シームや隙間から微妙な浸水はあります。
背中側のコードロックでサイズ調整できます。
リバーカヤックで使う全面ネオプレンのスプレースカートに比べるとはるかに緩いフィット感です。
スカートはPFDの下に装着します。
上がPFDなし、下がPFDあり。
Y字のサスペンダーで肩から吊るし、前に大きく垂れるような形状です。
見た目の存在感はありますが、付けているとあまり邪魔でもなく、付けたまま釣り上がったり、泳いだりしてもほとんど気になりません。
スカートを付けたままスカウティングをしているときに「すごいパドルアクティビティしてる感じする!」と思いました。パックラフトをしててこの間隔は初めて。
スカートをコーミングに装着する手順。
後ろからはわせるように合わせていき、横を通って前まで付けて行けば完成です。
脱出用の赤いバンドは必ず出ていることを確認しましょう。たまに内側に挟み込んでしまうことがあります。
慣れれば10秒程度で装着できますが、慣れても上手くハマらないと時間がかかってしまいがちです。
特に最初に付ける背面のスカート部分が縫い目になってて少しハマりにくいです。慣れるために何度も付けましょう。
外す時は赤いバンドを手前に引っ張るだけ。
簡単に取れてしまわないように固めですが、片手で外せるレベルです。
沈したときは流されながら水中でこの作業をしないといけません。これがスプレーデッキ艇が初心者に不向きで避けられる理由です。
アリゲーター2Sproで何度も沈してきましたが、意図しない沈時は全て膝でスプレースカートが外れました。
不意の沈で赤いバンドを引っ張る必要があるシーンはありませんでした。
つまりは思ったほど心配しなくて大丈夫というわけです。
完全な初心者ならかなり慌てますが、ある程度乗り慣れている方なら沈時もトラブルが起こることは少ないでしょう。
逆に、沈してもサイストラップを外さないことを意識していれば膝がずれずスカートも外れないため沈脱の練習もできますし、出来る人ならエスキモーロールで復帰もできます。
2023年バージョン
告知されてませんが、MRSのパックラフトは2023年に一部をマイナーアップデートしています。
Alligator 2S Proだけの話ではなく、ほぼ全モデルで共通ですが、在庫で切り替わるタイミングはあるため新旧は混ざるはず。
ベルクロ化
個人的に一番嬉しいシート、バックレストのベルクロ化が全モデルで行われているようです。
以前はシートは紐で固定されて取り外し不可、バックレストはナイロンバンドで固定され着脱はかなり手間でつけっぱなしでした。
ベルクロ化することで、パックラフト内のパーツを全て外して乾燥させることができるようになりました。
乾燥しにくいフルシートのバイキングやスプレーデッキの付いたアリゲーターでは特に嬉しい仕様です。
旧モデルバイキングを自作でベルクロ化してます。
サイストラップ
5点固定サイストラップのフックがプラから金属に変更されました。
簡単に割れたりもしませんが、金属になってほぼ故障のリスクから解放されたと言えるでしょう。おそらく数グラム重くなっているはずですが、ずっと嬉しいです。
ハンドル
コックピット内、左太もも横にハンドルが付きました。
サイストラップを掴めば持てるので正直必要性も感じてませんが、空荷なら丁度センター位置で持ちやすいです。
これもおそらく変更点。
ノマドでも採用されてましたが、他にどのモデルで採用されているのか不明。
無くてもいいけど、あれば持ちやすいときもある。そんなハンドル。
スケグ取り付け部
スケグ取り付け部がちょっと立派になってます。
使用感は特に変わらない印象ですが、立派になりました。嬉しいです。
水上テスト
実用での乗り心地。
操作性
乗った瞬間に不安定さを感じたほどの幅の狭さは、操作性の高さに直結します。
5点固定のサイストラップは動きをダイレクトに伝え、少ない力で舟を動かせます。
この2点で左右への動きが非常にクイックでした。
エディキャッチやリーンのしやすさはオープンデッキやセルフベイラー艇では味わえない軽快な操作性です。
一方で全長と喫水線が長く、スターンのボリュームが大きいため、岩のゴツゴツした細かい動きや回転を求められる川は苦手でした。
回転すればスターンが引っかかったり、そもそも長すぎて通れなかったりするからです。
もう少し全長の短めでロッカーの強い小渓流向きの艇をラインナップしても面白いなと思った理由はこれです。
川下りという点に関しては、常に浸水状態にあるセルフベイラーは安定感が上がる一方で、動きが重くなりがちです。
普段のメイン艇、セルフベイラーのバイキングと見た目はそっくりですが、乗り心地も操作性も性質も別物でした。
初めてパックラフトに乗るなら安定感の高いバイキングを勧めますが、よりスポーティな動きや瀬での跳ねる感覚を楽しみたいならアリゲーターを勧めます。
同じ川、瀬でも乗る難易度はアリゲーターが上です。
バイキングではしなかったような沈がアリゲーターでは増えました。
その分、狙った動きをしやすく乗りこなしたときの楽しさもアリゲーターが上でした。
漕ぎやすさ
幅狭め、チューブ径も27.5cmなのもあってか、パドルがめちゃくちゃ漕ぎやすい。
グリフォンラフト ストレウスのような幅広いモデルだとパドルや手がチューブが当たるのを意識的に避ける必要がありますが、アリゲーターなら意識する必要もなく当たることが有りません。
漕ぎやすいため乗っててストレスが少なく、パドリングが楽しいと感じます。
快適性
一方で全面をデッキに覆われ、スプレースカートを外してもコックピットの円形内しか動けず快適性はかなり低め。
幅の狭さは艇内の狭さでもあり、足も伸ばしきれないほど。
カヤックや他の乗り物と比べればそれほどでもないのですが、パックラフトと考えるとリラックス度は格段に低い艇です。
しっかり漕ぐ、長距離を移動する、ガンガン川を下る、そんな乗って漕ぐ目的以外では他のパックラフトに比べてはるかに窮屈でした。
沈
川下りにセルフベイラーを勧められる理由であり、スプレーデッキ艇が避けられる理由でもある、沈したときの脱出する怖さ。
・沈→サイストラップから膝を外す→赤いバンドを引っ張ってスプレースカートを外す
の2手間が必要です。
「いざ沈したときにそんなことできるの?もし外せなかったら?」
という不安があるでしょう。
しかし心配するほどではありません。
アリゲーターで4回ほど想定外の沈(ガチ沈)をしましたが、全シーンで慌てる間もなくサイストラップもスプレースカートも外れていました。
サイストラップは膝を付けた状態でのみ固定されるもので、膝を伸ばせば外れます。
おそらく沈したときに慌てて膝の位置がズレて外れたのでしょう。
膝が外れれば、膝なのか、舟と固定される限界なのか、スプレースカートも外れていました。
意識的に沈したときは膝を外さなければサイストラップも外れず、エスキモーロールもできます。
しかし、不意の沈ならサイストラップもスプレースカートも外れてしまいがち、というわけです。
ガチ沈したときのやつ。
初心者が避けがちなスプレーデッキ艇、不意の沈でもスカートは勝手に取れるのでビビる必要もないですね。 pic.twitter.com/plaiou52fg— ぜつえん (@zetuenonly) August 8, 2023
他のスプレーデッキ艇ならわかりませんが、MRS Alligator 2S Proに関して言えば沈時にスプレースカートが外れないリスクはほとんど気にしなくても大丈夫です。
気付いたら取れてるから。
それでもサイストラップを外す練習、スプレースカートを外す練習は繰り返し行いましょう。
そして沈時に感動した話。
ひっくり返った状態で、バウスターンに対してコックピットが凹んでいるため沈してもほとんどパックラフト内への浸水がありませんでした。
一人ロール練習をしていたときに、沈→沈脱→再乗艇→沈→・・・と繰り返していたときに一定以上は水が溜まらなかったのです。
沈時は水が入りにくいですが、ネオプレン系のウェットウェアを着て頻繁に乗り降りしていると中に水が溜まりやすかったです。
水抜けの悪い沢靴(mont-bell サワークライマー)を履いてるのもあり、中で水が少しづつ抜けて溜まっているのを感じました。
ひっくり返して排水すれば一発ですが、ビルジポンプやビルジスポンジなどを持っておくのも便利でした。
乾燥度
個人的に最大の欠点だと思ったのは乾燥しにくさ。つまりは水の抜きにくさです。
スプレーデッキ艇一律の欠点であり、触る前から思っていましたが、中々乾きません。
アリゲーター的にはシート、バックレストが外しやすくなったのが唯一の救いです。はるかに乾燥が楽になりました。
とは言ってもタオルやビルジスポンジなどでふき取ってあげれば比較的早く乾燥させられます。
他スプレーデッキ艇と比較
驚くことにMRS Alligator 2Sと2S Pro。
実は国内で手に入る唯一の一人乗りスプレーデッキ艇だったりします。
海外ブランドなら、Alpacka Raft、KOKOPELLI、nortik、GP General Packraftなどから出ています。
ただモンベルが代理店のKOKOPELLIの個人輸入は送料が高すぎて買う気にならないはず。
海外ブランドを含めても、現実的にスプレーデッキ艇を選ぶならAlpackaRaftかMRS(Alligator)の2択です。
というわけで、2社のスプレーデッキモデル10艇をピックアップ。
金額順で並べてます。1$=約143円です。
アルパカラフトはドルですが、送料込み金額を円換算して表示してます。実際には関税で+1万円程度かかります。
最安はAlligator 2S、次いでAlligator 2S Proでした。
アルパカラフト最安は、軽量で旅向きなRefugeで約19万円。耐久性安定性が低く急流モデルではありません。
急流モデルのWolverineとGnarwhalは約26万円と高級品です。
最新モデルで、従来のパックラフトとは違う急流向きカヤックタイプValkyrieは約33万円とAlligator2艇分。現状世界一急流向きなパックラフトでありやや特殊です。
驚いたのはほとんどの艇でTIZIP内部ストレージが標準装備なこと。
積載力の低いスプレーデッキ艇だからなのでしょうか。これを見るとAlligatorにもISSは付けるべきだなと思えます。
急流用スプレーデッキのパックラフトで検討しているなら真っ先に候補に上がるのがAlligator 2Sか2S Proなのです。
細かい性能差は乗ってみないとわかりませんが、特に静水でも使いやすいのがAlligatorです。
比較した中でもValkyrieを除けば、Alligatorが最長でした。スケグもあって速度は一番速いはず。
逆に小回りを利かせて川下りをしたいなら小型なAlpackaRaftも候補になってくるでしょうけど、金額に糸目は付けられません。
Alligator 2S Pro総評
Alligator 2S Proの総評。
国内で買える唯一のスプレーデッキ艇です。
長く使える高強度生地を採用し、TIZIP内部ストレージを標準装備しています。
静水にも急流にも強く、濡れにくいため寒い時期や地域にも向いています。
急流の川下り用として動きの重たいセルフベイラーよりも、軽快に使いまわせるため練習できるスポーツ指向の人に向いてます。
一方で公表値以上に重く、収納サイズはそれなりに大きめ、スプレイデッキフレームの収納しにくさなどパッキングして長距離長時間の携行性は低め。
とは言っても電車やバイクで移動程度なら全く問題無し。自転車でも使えます。
脱出は容易ながら安定性の低さ、窮屈さ、乗り降りの手間から練習と慣れが必要でパックラフト初心者向きとは言いにくいです。それでも川下りを積極的にやっていきたい初心者になら勧められます。
ぼくは北海道で寒い時期にもパックラフトに乗りたいと思ってるため、バイキングよりアリゲーターが向いているかもと感じてます。
激しい川下りもしたい、寒い時期も乗りたいならセルフベイラーは不向きで、消去法でスプレーデッキしかないからです。
Alligator 2S、Alligator 2S Proを勧める人はこんな人です。
・急流の川下りをしたい
・静水も素早く漕ぎたい
・軽快な動きがいい
・寒い地域、寒い時期でも乗りたい
・キャンプ道具をたくさん載せてツーリングしたい(ISS)
まとめ
これまで10艇以上のパックラフトに乗ってきましたが、最も軽快な動きでスポーティな艇でした。
だからこそ、もう少し小回りの利く形状だと自分の遊ぶフィールドに合うなとも感じました。
高品質なMRSのスプレーデッキ艇、とても楽しいパックラフトでした。
MRSのオープンデッキPonto、簡易スプレーデッキMicroraft、セルフベイラーVikingを比較した記事もどうぞ。
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