こんにちわ、ぜつえん(@zetuenonly)です!
山岳用テントのポールの欄に載っているDACの文字。見たことありますか?
実はDACはポールを作っている会社の名前です。
DACが作るポールは軽量ながら、強度も高いため様々なテントメーカーが採用しています。そして、高価な山岳テントはDACポールを使っているから高いというのも要因のひとつなのです。
今回はDAC(ディーエーシー)とは何なのか、ヘリノックとの関係は、DACポールの種類、他のポールメーカーの素材などを調べたので紹介していきます。
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DACとは
DAC(ディーエーシー)は1988年にジェイク・ラーが創立した韓国のテント用のアルミポールメーカーです。
DAC=Dongah Aluminum Corporation(ドンア アルミニウム カンパニー:東亜 アルミニウム 会社)の頭文字でDACです。東亜=東アジア=韓国でアルミニウムを加工する会社ということでしょう。
口頭で言う時は「ディーエーシー」もしくは「ダック」です。
創設者であり最高責任者のジェイク・ラー(Jake Lah)氏は、アメリカで金属加工や工業を学び、韓国に戻ったあとテントポールに目を付けました。
それまではテントポール業界ではイーストン社(アメリカ)のポールが主流でしたが、DACの独創的なアルミ加工技術から独自のアルミ合金素材を使ってポールを開発し、一気に世界的なテントポールのシェアの地位を獲得しました。
1991年に開発されたDA17は日本に向けて積極的に供給されたテントポールのようです。
1996年にFeatherliteポールとプレスフィットポールを完成させ、ここから一気に世界的なシェアに。
2004年には幅広く山岳用テントに使われるFeathelite NSLを開発、2013年にはより軽量なFeatherlite NFLを、最近はPLポールを開発しました。
現在は、世界中の80以上のテントメーカーがDACポールを採用し、日本でもDACポールを使ったテントを多くのメーカーが販売しています。
さらにDACのペグやタープポールはA&Fが日本の輸入代理店として取り扱っています。
Jake Lah
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韓国人のジェイク・ラー(Jake Lah)はアメリカのミシガン大学でMBAを取得してから、韓国に戻ってきてDACを立ち上げてました。
それまでテントポールを作るのがイーストン社しかいなかったからです。
DAC設立からあくまでパーツを作る立場であり、表舞台に出てくることのない人物でした。
2020年?には韓国内でJakeLahという自分の名前を使ったテントブランドを展開し始めました。
2021年には、シートゥサミットが出したテントのアルトとテロスでは大々的にかかわっていることをアピールしていました。
テントの歴史を最前線で開拓し続けるDACの今後の展開に期待したい限りです。
テントポールの王とも言われるジェイクラーへの海外インタビュー記事を翻訳してます。詳しく知りたい方はどうぞ。
ヘリノックスとの関係性
キャンプ人気からDACよりも知名度が高くなったチェアやコットを出しているヘリノックス。
ヘリノックスを語る時に知らなければいけないのがDACの存在なのです。
2009年にジェイク・ラー氏の息子であるヤン氏がDACから独立し、DACポールを活かすために立ち上げたのがヘリノックスです。
ポールを作る会社を母体に持っているため、スタイリッシュな構造やデザインのヘリノックス製品に合わせたポールを用意できるため自由度の高い製品を作りやすいのでしょう。
それでいて最高品質のアルミポールなので信頼性も最上級です。
ヘリノックスは年々種類を増やし、用途に合わせラインナップも豊富。
・定番のアウトドア用途を考えた軽量なモデルライン。
・日常生活での使用を考えたHOME DECO&BEACH(ホームデコアンドビーチ)。
・ミリタリーカラーと機能を両立したTACTICAL SUPPLIES(タクティカルサプライ)。
・バックやサコッシュなど新製品を設計するTrial and Error Research Group(トライアンドエラーリサーチグループ=試行錯誤しながら研究するチーム)の頭文字を取ったTERG(ターグ)
現在、日本ではA&Fとモンベルが輸入代理店としてヘリノックス製品を取り扱っています。
テントやタープといった大物から、ホームデコ&ビーチ、タクティカルサプライはA&Fが。
定番アウトドア用チェアやコット、テーブルはモンベルが輸入販売しています。
最後まで読むとヘリノックスが高い理由がポールにあることもわかってくると思います。
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DACの特徴
DACの開発したポールには2つの大きな特徴があります。
・独自のアルミ合金TH72M
・環境負荷を抑えたグリーンアノダイズド
それぞれ説明していきます。
TH72M
TH72M(通称M)はDACが開発したアルミ、ステンレス、チタン、銅などを配合したオリジナルのアルミニウム合金です。
アルミニウム合金の中で最も耐久力が高い7000番台であり、過酷なアウトドア環境で使うことを想定し、軽量性と耐久性を高次元で両立した合金素材なのです。
調べたところTH72MはA7075-T6でした。
ちなみにA7075-T6の規格名は超々ジュラルミンです。ペグやポールでよく見るやつですね。
DACのポールは薄く、強く、軽くを両立しているのが特徴です。
薄い合金ポールでは応力腐食割れ(Stress Corrosion Cracking)と呼ばれる経年損傷が起こりやすい問題があります。ポールを厚くするとそのリスクは減りますが、製品重量が重くなってしまいます。
しかしTH72Mでは薄いポールのまま応力腐食割れのリスクが起こりにくい合金にすることに成功しています。
グリーンアノダイズド
アルミ製品を作る際に錆びを防ぎ、強度を上げるために行われるアノダイズド加工(陽極酸化処理)があります。
電解質を加えた水溶液に電流を流した際に、電極上に形成される陽極酸化の被膜を作る加工です。しかし、陽極酸化加工では硝酸やリン酸といった有毒な薬品を使うため、環境への影響が大きくなります。
DACはこの陽極酸化処理時の水溶液に使う硝酸やリン酸などの有毒な薬品を極限まで減らす研究に8年以上の歳月を費やし、2008年に環境への負荷を最低限まで抑えたグリーンアノダイズドを開発しました。
またアノダイズド加工施設の水をリサイクルすることで環境への負荷を減らす取り組みも行っています。
DACポールには「GREEN」の文字がありますが、それはこのグリーンアノダイズドを表しています。
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DACポールの種類
DACポールの種類を紹介していきます。
Pressfit
1996年に開発されたPressfit(プレスフィット)。
ポールとポールの接続部に使われる部分とポールとの接続を文字通りプレス(押して)で固定する方式を取っているようです。
手持ちのアルミポールでは外側から何か打ち込まれて固定されていますが、DACポールには何もあとはありません。これとは違うのか、ちょっとわかりません。
Featherlite NSL
2004年に開発され、山岳テントで最も多くみられるのがこのDAC Featherlite NSL。
TH72Mを使うことで高強度と軽量性をバランスよく両立し、軽量なテントから冬用のテントにまで使われるポールです。
特徴は1本のポール上に異なる径を混在させることができる世界初の構造です。
・・・なるほど、文字で言われてもよくわからん。
と思いながら自分の持っているNSLポールを組み立てたり触ってみると気付けました。
写真ではわかりにくかったので図解で。
接続部の手前から少し太くなっていて、接続の差し込み部(インサート)がポールのメイン径と同じ太さになっています。
これにより通常のアルミポールでは差し込み部がポールよりも細くなるのに比べ、NSLでは接続部にも高い強度を実現しているのです。
1万円ほどのテントの同じ径のアルミポールとの比較です。
写真ではわかりにくいのですが、差し込み部分の太さはかなり違います。
特に手で触るとその差は歴然でした。
DACポールをお持ちの方は是非触って実感してみてください。最もDACを感じやすい膨らみです。
そしてこの性質を活用すると1本のポールを節の中で太さを変えることもできるのがDACポールです。
例えば、曲がり方の少ない地面側は細いΦ8.5mmに、負担の高い上部はΦ9.0mmにという使い分けができるのです。
軽量化と強度の両立がしやすく、テントの使用目的に合わせたポールを作れるということです。
径を変えるだけでなく、ポールを曲げるのもDACの得意技です。
ニーモやビッグアグネスでよく見かける“くの字”に曲がったポールはより広い居住性を作り出すことができます。
そんなブランドの意図した用途に向けたテントを作ることがDACへの信頼性にもつながっているのでしょう。
NSLで使われるポール径は8.05mm/8.5mm/9mm/9.6mm/10.25mmの5種類の太さが使い分けられています。太くなるほど重くなりますが、強度が上がり冬や極地に対応したテントになっていきます。
モンベル/ステラリッジ
山岳テントの大定番です。NSLΦ8.5mmで最新モデルは中央をハブで接続したX型の吊り下げ式です。
最低重量1230gと強度と軽量性を両立したモデルです。
MOBI GARDEN/LIGHT WINGS DAC UL1
最近借りたまま購入したモビガーデンの最新テント。
製品名通りDACのNSLΦ8.5mmポールを採用しながら破格の安さが魅力です。
重量も1215gと軽量、フライ吊り下げ式のダブルウォール自立式で、設営も爆速です。
Hilleberg/ソウロ
NSLΦ9mmを3本使った高強度テント。
ヒルバーグはテントのグレード(レーベル)で使うポール径が変わり、レッドレーベルのソウロはΦ9mm、ブラックレーベルではΦ10mmのポールを使っています。
Featherlite NFL
2013年に開発という数年前にできたばかりのFeatherlite NFL。
昨今のULブームに合わせて開発されたNSLと似たポールですがより軽量性に特化したポールです。
ポールの重量を6~18%削減できるのがNFLの特徴です。NSLに対してという意味でしょう。
公式の比較では、ヒルバーグや冬想定モデルで採用されるNSLΦ9.0が19gのときに、NFLΦ8.7は17gと約11%ほど軽量。
NSLΦ8.5とNFLΦ8.7の差はかなり少なそうです。
軽量化のためにポールの肉厚を薄くしているため強度はNSLに比べ確実に落ちます。ULハイカーや風の強くなりにくい山用のテントに使われるポールであり、標高の高い山~冬山には向かないポールと言えます。
BIG AGNES/フライクリ-ク HV UL1
アメリカの大手テントメーカービッグアグネス。
軽量で特徴的なテントが多くあります。
定番フライクリークHV UL1は1040gと軽量でNFLを使用。
他にもタイガーウォール、コッパースプールなどでNFLを使っています。
さらに、ビッグアグネスのソルトクリークはDACプレスフィット、フライクリークHVカーボン W/ダイニーマはイーストン社カーボンポールとかなり使い分けてます。
プロモンテ/VL-27
ぼくが使っているVL-25の最新モデル。VL-27。
VL26まではNSLでしたが、シングルウォールのVBシリーズでNFLを使いだしたことからVL27でもNFLを使っています。色は変更なしでマイナーチェンジのみですね。
NSL→NFLに変更することで約60gの軽量化も果たしています。ポール差がわかりやすい変更ですね。
オールシーズン使える定番山岳用なので、軽量化に寄りすぎて強度を落としている気がしますが、問題ないという判断なのでしょうか。
THE FREE SPIRITS/Pangolin Pro
中国からやってきて日本でも始動しだしたTHE FREE SPIRITS(自由之魂)の軽量性重視なブルーラベルの山岳テント、パンゴリンプロ。
高品質な引き裂き強度の高いシルナイロン素材のフライシートに、3シーズンモノフィラインナー(1110g)と4シーズンナイロンインナー(1130g)が用意されてる日本向け仕様になっています。
DA17
1991年にDACが初めに開発した大型テント用のポールであり、TH72M(DAC独自アルミ合金)を開発する前に最初に開発された合金です。
DA17が開発されるまでのテントポールは高価で曲がる小径ポールと、低品質で曲がらない大径ポールしかありませんでした。
しかし高品質で手ごろな価格で曲がるDA17の開発は今のテントポール界の発展に大きく携わっているのです。
DA17を開発した後にTH72Mを開発し、Featherliteに至ったのです。
現在では一部の大型テントでしか見かけませんがヘリノックスのテントやタープ、ヒルバーグのグループ用テントに使われています。
PL
DACの最新のポールで、2015年にニゴアというメーカーのテントで初めて使われました。→Nigor Spix3
PLポールは13.55mmという太さでも従来の11mmポールよりも45%強固、それでいて他のポールよりも40%薄いポールの壁を実現しています。
NSL9.6mmと比べた時は30%ほど重くなりますが、2倍の強度、3倍の硬度を持っています。そして柔軟性を持っているのも特徴です。
〇倍や〇%と言われてもまるで実感がわかずわかりにくいのですが、強いだろうことはわかりますね。
まだPLポールを採用しているテントはほとんどありませんが、冬季や極地のような強風下で使うことを想定したテントに採用され、トンネル型テントに使われます。
DACポールの比較
Ultra Light Backpacking | 3Season | Family Camping |
Winter&
Expedition
|
||
ポール径(㎜) | 軽量 | 3シーズン | ファミリー | 冬&極地 | |
Featherlite NSL | 8.05/8.5/9/9.6/10.25 | 〇 | 〇 | × | 〇 |
Featherlite NFL | 8.7/9.3 | 〇 | × | × | × |
Featherlite | 8.55/8.84/9.35 | 〇 | × | × | × |
Pressfit | 8.5/8.7/9/9.5/10.2/11.1/13.2 | × | 〇 | × | 〇 |
PL | 10.65/12.1/13.55/15/16.8 | × | × | 〇 | 〇 |
DA17 | 11.3/12/13/14.5/16/18.55/19/22/25/28 | × | × | 〇 | × |
用途でポールの種類、径を使い分けています。
山岳用で見かけるのはFeatherlite NSLとFeatherlite NFLです。
この二つの違いが分かっておけばテント選びのポールで悩むことはほぼ無くなるはず。
DAC的にはNFLは肉厚が薄くされることで軽くなり、強度が低くなったポールです。そのため強度よりも軽量化を重視した軽い無積雪期を想定したテントに使われます。ウルトラライトブームの流れで登場したポールのようです。
NSLは8.5mmが一般的で、強めなソロテントには9.0mmが使われる印象です。
NSL8.5mmなら積雪期にも対応してるであろう強度を重視していることがわかります。9.0mmのソロテントなら夏よりも冬や極地的な用途を強く想定しています。
つまりはポールの種類を知ることでブランドが意図するテントの用途が見えてくるのがDACポールというわけです。
さらにマニアックな話ですが、ブランドによって製品ページで「DAC Φ8.5mm」しか書かれない場合もあります。ソロテントならばそれがNSLなことがわかります。「DAC Φ8.7」ならNFLです。
ある程度径から予測できるという覚えておくと万が一で役に立つ知識です。
ぼくは下の記事を書くときに覚えてて助かるシーンがありましたが一般的に一生使わない知識です。でも好きでしょうそういうの。
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DACポールの価格
DACポールを使った山岳用テントは非常に高価です。
個人的な感覚ではDACポール採用なら3万円台だと安め、4万円台が定番、海外テントなら5万円台というイメージです。もちろん高ければ10万円超えもありますし。
生地や構造、細部の作り込みまで全てをこだわっているため高価になっていますが、DACポールを使っているから高価というのも事実です。
「じゃあDACポールってどのくらい高価なのさ?」という話。
で、いきなり結論。
モンベルで探したところステラリッジ2型のポール一式で税込み8800円でした。
今はフライと本体別売りで税込み13200円、本体が税込み32120円でうち8800円がポール。残り23320円が生地やペグ、スタッフバッグという考え方ができます。
フライに対して、少し本体が高い気もしますが、いいくらいなのでしょうか。
メーカー差もあるはずですが、シンプルな1~2人用山岳テントのDAC Featherlite NSL Φ8.5mmでこの程度の金額という目安にはなります。
最初からテントのポールをばら売りしているところは見つけれませんでしたが、ヒルバーグ用のFeatherlite NSL Φ10mmの1節のパーツ売りをしていました。
1節なんと1815円。
1つのテントで使うポールの節は大体20前後です。ばら買いすると考えればポールだけで3万円を軽く越えます。
そしてぼくの話ですが、今も使っているプロモンテVL-25というテント。Featherlite NSLΦ8.5mmを使っています。
以前ポールが曲がった時に修理をしました。うろ覚えですが、それが3節交換+生地の破け補修で7000円ほどだったと記憶しています。計算が難しいですが、1節2000円以下位でしょうか?
ステラリッジ一式8800円を考えるとやや高く感じてしまいます。
逆に安いテントはポールも安く、ネイチャーハイクのCloudUP 2のポールは1テント分(14節ほど)のパーツ売りで2500円ほどです。→https://ja.aliexpress.com/item/32979832793.html
DAC パーツの金額
DACはポールだけでなくポール接続用のハブやポールの末端パーツ、そしてペグも作っています。
実はこれも高価なようで、テントの値段を底上げしています。
Featherlite NSLやNFLで採用されるフライ・ポール・インナー・フットプリントを連結させるパーツには感動しました。
特にフットプリントを接続したまま収納設営ができるのは驚異的。
樹脂パーツが多いため破損のリスクが少し心配ですが使い勝手は抜群です。
このパーツはシエラデザインの人がジェイクラーにちなんで「ジェイクの足」と呼んでいたようです。
現在は「Jake’s Corner(ジェイクのコーナー)」として特許が取られています。
ハブやパーツの正確な金額はわかりませんが、ペグはA&Fが単体売りもしているためわかります。
16cm→190円/本
20cm→230円/本
30cm→1000円/本
最近買ったモビガーデンのLIGHT WINGS DAC UL1は16cmペグが10本ついてました。25000円のテントの価格のうち1900円分はペグの価格というわけです。
ヘリノックスのテントになると30cmペグが数本ついてくるためそれだけで数千円です。
高いなぁとしか思えませんが、DACペグは頑丈で刺さりやすく使い勝手は抜群です。
それが最初からついてくるのは嬉しい話でもあり、細部まで良いモノを使っているから高いという理由でもあります。
DAC NSL・DAC NFL・中華アルミポールを比較
上でも書きましたが、プロモンテのVLシリーズがVL26まではDAC NSLΦ8.5mmを使ってましたが、VL27からDAC NFLΦ9.3mmを採用しています。そして数十グラム軽量化できています。
Φが太くなったのに軽くなるのはポールの肉厚が薄いからです。
では実際どの程度の薄いのでしょうか。
手元にDAC NSLΦ8.5mm、DAC NFLΦ8.7mm、中華アルミポールΦ8.5mmがあったので、細部を計測してみました。
と言うわけでこんな感じ。
アルミ中華ポールは多くが同じ金型で作られているためΦ8.5mmのようです。
~3万円位のソロテントはほぼこれ。
肉厚はNFLは特に薄く約0.4mmでした。
径が違うため純粋な比較ではありませんが、肉厚0.55mmのNSLよりも肉厚0.4mmのNFLは約72%の重量しかないことになります。
DACといえどアルミ合金のため、金属の特性は大きくは変わらないはずです。
そう考えると中華ポールはNSLの約1.27倍重く、NFLの約1.75倍重いわけです。
それでいて接続部には剛性を出しているわけで軽量性が重視される登山用テントにDACが使われる理由がわかりますね。
DACのテントをどうとらえるか
ポールの話でこれだけ書けば、DACのポールが高品質で高価なことは分かったかと思います。
ではそれ以外はダメなのかと言われればそんなはずはありません。
テントは適材適所です。
この記事ではDACを採用するテントを“山岳テント”と表現しています。
大前提として山岳テントは人力で担ぎ上げるため、軽量性は最重要です。
さらに山は強風や大雨、冬なら吹雪や積雪と厳しい環境になることも多くテントへの負荷が大きくなりやすい場所で、高い強度が必要とされます。
特に山の風は平地の比ではありません。
山では夜に風が強くなります。頂上近い稜線に張ったときは吹きさらしとなりテントだけが頼りです。
風速10~20mなんてこともあり、どんなにしっかりとテントを張っていても風であおられ続け、DACポールですら曲がりつぶれることもあります。
そんな環境になる可能性がある場所に行くときに、山岳テントは高いからとamazonの安いテントを使うのは自殺行為に等しいと考えます。
もちろん、無風の日多いですし何も起こらないことのほうが多いです。
それでも万が一に備えるのが山です。
少しでも信頼性の高い軽量で強いテントやポールをと考えたときにDACポールを使ったテントを選ぶことになるのではないかとぼくは考えます。
ウィンドラボ
おまけ的な話。
DAC社は世界的なアルミポールメーカーです。
その強度を測るためには耐風テストをする設備が必要なわけで、それがDAC社が作った「Wind Lab(ウィンドラボ)」
ウィンドラボにある送風機は3.5メートルの特大サイズで、最大風速45メートル/秒(時速162km/h)の風を送り出すことができるのだとか。
ああ見ますよねこういうシーン。
にしてもすごい見覚えのある気がする施設。
おそらくですが各社が耐風テストの結果を出すときの画像が色味からしてDAC Windlabですよね。
写真はモンベルステラリッジですが背景的にWindlabです。
調べるともっと出てきますが大体Windlabっぽい背景です。何だか合点がいった気がして嬉しくなります。
DAC以外のポール
DACポールの山岳テントでのシェアは圧倒的ですが実は一強というわけでもありません。
有名ブランドがあと2つ。イーストン社(アメリカ)とユナン社(韓国)です。
それぞれ簡単に説明していきましょう。
Easton(イーストン)
イーストン社は1922年にアメリカで創立、当時は木で弓と矢を製作していました。
その後、アルミ製の弓矢を作るようになり、野球のバット、アーチェリーの矢などを作っていました。イーストン社はアルミやカーボンの棒物を作るのに長けているのでしょう。
テント業界に参入したのはDACよりも少し早い1976年のことです。
その後多くのメーカーがイーストンのポールを使っていましたが、だんだんとDACに切り替えるメーカーが多いように思います。
マウンテンハードウェアやノースフェイスのテントも昔はイーストンだったようですが、今ではDACを採用しています。
現在、イーストンのポールを採用して有名なのはMSRでしょう。
数年前にMSR用に開発したサイクロンポールは片手で持って丸くなるほどの屈曲性と耐久性に優れています。
MSRの中でも上位グレードのテントに採用されており、重い雪が降り積もる環境下でもポールがつぶされ曲がらないようにしています。
情報が開示されていない複合素材で、カーボンでもグラスファイバーでもないのだとか。
DACに比べ柔軟性に優れますが金額が高めという印象があります。
イーストンのフラグシップポールは、カーボン+アルミのポールで軽量性で見ると世界最高峰のポールのようです。→ビッグアグネス フライクリークHV1カーボン withダイニーマ
YUNAN(ユナン)
ユナン社(雲南アルミニウム株式会社)は韓国のアルミメーカーです。
1979年に創立、1982年からテント用ポールを作っています。
時期的にはイーストン社よりも少し遅いですがDACよりは早くからテントポールを作り出しています。
ただユナン社は情報が少なくわかるのはこの程度です。
しかしユナンのポールを使ってるメーカーは地味に多く、ヘリテイジのエスパースやクロスオーバードーム。アライテントのエアライズなど日本でもいくつかのメーカーでユナンのポールを使っています。
DACより安いのでしょうかね。
ネイチャーハイクもユナンポール採用テントを発売しています。
まとめ
安価なテント(ネイチャーハイク)と山岳テントの金額差は大きく、その要因の一つがDACの存在です。世界中のテント作りのプロ達が選ぶポールということは、クオリティと信頼性の高さの証明でもあります。
ポールが山でテントを使うことを考えたときの選び方の一つがチェックポイントにもなるでしょう。
テントの価値をサイズや見た目ではなく、ポールで感じられるようになるとそれは、変態でしょうか?
DACポールに対するぼくの評価は決まっています。
「ぼくがかんがえたさいきょうのてんと」を作るとしたらDACポールを採用する、その程度の信頼性の高さです。
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コメント
[…] で、ポールのお話だが、長い2本のメインポールはDAC Featerlite NSL 9mm。山岳テントでよく使われているポールで高強度と軽量性があり、またしなやかで風を吸収するような働きをしてくれるようだ。上のポールはメインポールよりも固くつくられており、室内を広くしてくれている。このサイトに詳しく掲載されていた。→コチラ […]
ダンロップのR204ツーリングテントを10年愛用しています。その流れでVS30を導入しました。
しかしソロ登山用途だと大きすぎて狭いテン場だと申し訳ないので、VS20の中古を買いました。
しかし、付属のポールが純正のDAC社のものではなく、YUNAN社のものが付属しており調べたら
この記事に行くつきました。多分 DAC社やYUNAN社のポールについての記事って日本で唯一じゃないでしょうか。
センターハブ欠品だったので、ARTスポーツ経由でHSC社に取り寄せました。
ARTスポーツの店員さんがYUNAN社のポールにセンターハブ取つけてくてるというので
お願いしたところ、このYUNAN社のポールは旧エアライズのポールなんだそうです。
長さサイズはDAC製と合っていたので、問題なくVS20を設営することができました。
センターハブない間は、カラビナでインナーとポールを固定していました。
ちなみにダンロップ(多分プロモンテも)のテントは縦横のサイズがほぼ同じなので
R204用のフライやVS30用のフライをVS20で使うことができるのが良いです。
重さを気にしないと、R204は長辺の両面に出入り口があり、更に左右開閉可能で
左右フルメッシュも可能なので、快適さでは一番ですが、重さが3.5キロなので
バイクでのソロキャンプ用。VS30は妻との二人キャンプ用 VS20はソロ登山用にしています。
ヒレッジ様
お互いですが、テントをポールのメーカーや種類で見る人も珍しいみたいです。
センターハブ欠品は痛いとこですが、すぐに取り寄せられるのは国産HSC社のメリットですね。
YUNAN社のポールはあまり詳しくないのですが、結構使ってるブランド多いですね。
エアライズやヘリテイジも一部で使い分けしているようです。
なるほど、考えたこともありませんでしたが、ポールに互換性があるのは面白いですね。
にしても完全にHSC社、ダンロップテントに魅了されていますね!
ぼくもプロモンテVL25を数百泊使ってきましたが、一番の相棒と呼べるテントです。
最近も意欲的に軽量化志向な変わった新テントも出していて目が離せません。