こんにちわ、ぜつえん(@zetuenonly)です!
いきなりですが冬山における最大の悩みは手足の冷えではないでしょうか?
分厚い高価な手袋を使ったからと解決するわけでもなく、使い方や乾燥させる方法など悩みは尽きません。
その手の冷えに関する悩みの対策として今シーズン取り入れたのが「VBLシステム」です。
欠点もあるため万人向けとは言えませんが、自分の中で革命的なシステムで感動したのでシーズン終盤ですが記事にすることにしました。
今回は冬山の冷えを解消するVBLシステムの仕組み、レイヤリング方法、欠点を紹介していきます。
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VBLとは
「キミは知っているか?VBLシステムをっ!」ってタイトルにしようと思ったんですが、自分らしくないのでやめました(笑)
VBL(ブイビーエル)は“Vapor Barrier Liner”の略称です。
Vapor:ヴェイパー→蒸気
Barrier:バリア→障壁
Liner:ライナー→裏地
アラスカなど極寒の極地で使われる防寒システムであり、VBL製品を出しているラボラトリズムさんが言うには
「人間の皮膚は100%湿度が飽和して蒸れている状態では、それ以上汗をかくことがなく、かつそれがもっとも体温低下を抑えることになる」
引用元:Laboratorism
とのこと。
何を言ってるか言葉の意味は理解できても、理論は全く分かりませんね。
ぼくの言葉で言うなら「密閉空間(透湿性ゼロな服)の中で汗をかいて、湿気が溜まり、湿度100%の状態になると肌から汗が出なくなる。その状態では何故か冷えにくくなる。」
・・・書いてても意味わかりませんね。
「その理論が正しいなら泳いでる時には汗かかないよね?どうなの?」と疑問点もあるわけですが、実際に使ってみて「手が暖かい」「手袋が汗で濡れない」という圧倒的メリットが得られるのは事実でした。
おそらく、手汗の蒸発を防ぐ→気化熱が発生しない→冷えない→暖かい、だと思ってます。
登山やアウトドアをしていると汗濡れは良くないことで、冷えに繋がるモノであるという常識があるから余計に不思議さが勝る感情です。
汗冷えとは
アウトドアマンであるぼくらは、汗をかく=冷えると考えてしまいます。
汗が体を冷やす理由は大きく二つ、気化熱と熱伝導です。
まず登山で体を動かすことで、汗をかきます。その汗が水分(液体)→水蒸気(気体)と変化するときに体温を奪うのが気化熱です。
アンダーウェアのウール素材はこの気化熱を使って発熱する吸湿発熱機能を持っていたりもします。
そして水分は空気よりも熱を伝えやすく、濡れた状態は乾燥状態に比べ約25倍の熱伝導率が高くなります。
そのため汗で濡れた肌は寒い外気温が伝わりやすく体を冷やします。これが熱伝導による冷えです。
ぼくが愛用してやまないミレーのドライナミックメッシュやファイントアックのドライレイヤーは、肌と汗(水分)を切り離すことに特化した熱伝導で冷えにくくしたアンダーウェアの下に着るドライレイヤーウェアです。
VBLシステムに汗冷え要素は無い
この後で細かく紹介していくVBLシステム。
汗冷えの原因と合わせて考えるとVBLシステムは汗冷え要素がないことに気付きます。
透湿性ゼロなら通気性もゼロで風も入らず、水分による熱伝導がなくなります。
と、考えるとVBLのことをだんだんと理解できてきました。
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ニトリル手袋でVBL
では手のVBLシステムを組んでいきます。
汗抜けしないことが重要なことから透湿性ゼロの素材が最適であり、つまりはゴム素材です。
というわけで、使い捨ての極薄手ニトリル手袋を用意。
薬局などが安いと思います。サイズが合うゴム手袋なら何でもOKです。
VBLグローブで調べるとこの手のニトリル手袋を使ってる方が多くいたのを参考にしました。
箱ごと持ち歩くのは邪魔なので、ジップロックに何十枚か入れて車に積んでます。
基本的には山行1日1組の消費です。
100枚1200円なら1枚12円で、1山行12円程度のコスパです。
数千円数万円の手袋購入に比べるとはるかに安く防寒を試せます。
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ぼくのVBLレイヤリング例
今シーズン、VBLするニトリル手袋と合わせてレイヤリングしていたグローブはこの4つです。
ニトリル手袋はベースグローブ(肌の上に履く)。
トレールアクショングローブ、起毛グローブはインナーグローブ(ニトリルの上に履く)。
テムレス、アルパイングローブはアウターグローブ(インナーグローブの上に履く)的な使い方でレイヤリングしています。
全てを合わせるわけではなく、ニトリル手袋は常時履いてるとして。
暖かいとき→トレールアクショングローブ
少し寒い→起毛グローブ
雪を触れるシーン→トレールアクショングローブ+テムレス
暖かいけど雪に触れる→テムレス
稜線で寒い→トレールアクショングローブ+アルパイングローブ(アウターのみ)
のように使い分けてます。
レイヤリングするときは一番内側にニトリル手袋を履くのがVBLのポイント。
写真ではすでに汗ばんでます。
にしても常に汗濡れしてるって聞いてて気持ちいいモノではありませんね。べっちゃべちゃです。
ニトリル手袋の上にインナーグローブであるトレールアクショングローブを履くのが一番多くありました。
登りでも手汗で手袋が濡れることがないのが大きなメリットです。
ワークマンの起毛グローブは親指人差し指をカットして使っています。
指先が無いと冷えやすいですが、スマホの操作やカメラの操作がしやすいです。
トレールアクショングローブよりも保温力があり、雪が付かないシーン+少し寒い日用です。
特にモンベル トレールアクショングローブ(薄手フリース地)と防寒テムレス(中綿有)の2つをヘビーユースしてました。
左から順番に履いて(レイヤリングして)いく組み合わせです。
テムレスにドローコードが付いてないので雪が入ってきますが、素材は防水で雪遊びにも最適です。
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VBLのメリット
VBLの魅力。
なぜか手が冷えない→暖かい
やはり一番は手の冷えからの脱却です。
ニトリル手袋を履いて登り始めるとだんだんと蒸れてくるのが手でわかります。
確実に濡れてる、なのに冷えない。いやこれは暖かいな。みたいな感覚。
でもよくよく考えるとレインウェアを着てるときだったり、座っている時だったり、蒸れたときって暖かいですよね、その感覚がずっと続く感じです。
手の冷えを気にしなくていいだけで厳冬期の冬山登山が一気に楽しくなってきます!
内側からグローブを濡らさない
個人的に冷えない以上に嬉しいのがこれ。汗でグローブを濡らすことが無くなります。
実際に冬山を登る方ならわかると思いますが、登山口~森林限界までの樹林帯のハイクアップでは風もなく、厳冬期だろうが氷点下だろうが熱いわけです。
すると背中も、手先も汗ばんで服や手袋を濡らします。
樹林帯でインナーグローブが濡れる→森林限界で風が出てきてアウターグローブを履いても中が冷たいと冷えコンボで指先から辛くなってくるのはあるあるですね。
特にウールではなく、化繊グローブを使ってると冷えやすいです。
それがニトリル手袋を一番内側に履いていれば汗でインナーグローブを濡らす心配がなくなるわけです。有難すぎるぜVBL。
さらにグローブを汗で濡らさないのはメリット尽くしです。
日帰りなら恩恵は少ないですが、冬のテント泊登山時は革命的な快適さを味わえます。
冬山テント泊と言えば、1日中歩いて、雪を整地して、テント張ってからインナーグローブや靴下を乾燥させて、それでも乾かなくて懐に入れて少しでも乾燥させる作業があります。
翌日に影響してくるのでバーナーの下に置いたり、寝袋の中に入れたり、自分の服の中に入れたり必死で乾燥させます。
が、その作業も手袋が濡れなければ必要が無くなります。楽すぎぃ!
さらにさらに中綿入りグローブや裏起毛グローブを使ってる人。
そんな人もありがたいのがVBLシステム。
というのもゴア+プリマロフトや防寒テムレスといったインナーを取り外せない一体型グローブ。
このタイプは外側は防水生地で外的要因では濡れにくいですが、内側から汗で濡れて冷えに繋がりがちです。
そして分厚いぶん乾燥が大変という悪循環。
でもニトリル手袋でVBLをしておけば内側から濡れることもなく常にドライ。つまりそういうことです。
ニトリル手袋単体でも割と暖かい
上から履くグローブを活かす、的なイメージが強いVBLニトリル手袋ですが、単体でも割と暖かいです。
風を通さないことや中が蒸れっむれなことも要因かもしれませんが天気のいい日ならフリース系のグローブすら必要ないことも多くあります。
残雪期なら特に。
スマホ操作が可能
いまはインナーグローブの親指、人差し指でスマホ操作可能なモノが多くありますが、あれの信頼性は皆無。
結局タッチペンが最強かーってなります。
でもニトリル手袋なら素手ほど寒くなく、スマホを操作可能という便利さ。
上にグローブを履いてると、人差し指を出すのは大変なので親指で操作することが多いです。
VBLの欠点
ここまで見れば寒くないし、グローブを濡らさないし、VBLシステムって完璧なのでは?と思えます。
しかし、冒頭で万人向けではないと書いたように欠点も確実にあります。
蒸れ状態は気持ち良くはない
手だけとは言っても湿度100%の蒸れ状態は快適とは無縁な高温多湿な環境です。
レイヤリングしていることもあり、思ったほどの不快感はありませんが、薄いゴム手袋が手に張り付く感じはあります。
しなくていいならしませんし、下山して脱げる状態になればすぐ脱ぎます。
手の環境は間違いなく良くはありません。
手がシワシワになる
長時間体温程度で濡れ続けているため、お風呂に入った後のように手がシワシワになります。
あとぼくは脱いだ後乾燥するまでべたつく感じがします。
何とも言えない不快感で、ウェットティッシュで拭いたり、水で手洗いして汗を流すようにしてます。
臭いことも
汗は基本無味無臭と言われてるんですが、ぼくは日によりなんとなく臭いこともあります。
人に嗅がせるわけでもなければすぐに洗うから臭くてもいいんです、いいんですけどね!良いことではないですよね。
日本では主流じゃない
VBLは極寒の極地に向いた方法であり、日本の冬山程度では快適さよりも不便さが目立ってしまうシチュエーションが多いと思えます。
「VBL 防寒」などで調べると登山系のVBL話が出てきます。
が、数年前~十年以上前の記事が1ページ目に出てくる程度に知名度も無ければ、常用しているであろう人も稀です。
Twitterで「VBL 防寒」等で調べたほうが情報量が多いほどです。
そんな事情なため日本で初めて製品化されたラボラトリズムさんのVBLグローブも入手は可能ですが、すでに生産はされていないようです。
ノースフェイスが出していたアルパインクライマーというVBLソックスは入手すらできなそうです。
海外では一部ブランドから製品が出ているようですが、それでも少数派のよう。
流行ってない、情報量が少ない、専用製品はすでにない、それは万人受けしなかった事実だと言えます。
ラボラトリズムさんが参考にしたというスプリンゲンのトリガーミトン。
インナー取り外し可能なトリガータイプ。
ニトリル+インナーグローブ+スプリンゲンでラボラトリズムっぽいVBLシステムを再現可能です。個人的にはカフ欲しいのでそれは自作ですね。
まずは試してほしい
この欠点を見れば「わたしは生理的に無理。」と感じる人も多いと思うんですね。
そこに自分を納得させるように「別に手汗で困ってないし」とか「そこまで山行くわけじゃないし」とか考えだすと思うんです。
でも、VBLシステムが合えば不快さと引き換えにしてもやり続ける程度に今までの手の冷えや手袋の汗濡れという不満が解消される人がいるのも事実です。ぼくがそうでした。
他部位はともかく、手に関して言えばニトリル手袋のみで実践できるため導入難易度は低め。
まずは四の五の言わずに試して、それから悩んで欲しい、それがVBLシステムwith手です。
ぼくがVBL知ってから試しているときは左右の手で片側のみニトリル手袋でVBL。
反対は素手で差を試していました。
冬山は天気やコース次第で環境が大きく異なります。同じシチュエーションで左右別の環境で試すことで差を実感しやすいと考えました。
VBL導入の際にはこの方法もおすすめです。
他部位のVBL
ぼくは手のみVBLを実践してますが、頭、上半身、下半身、脚、寝袋など部位ごとにVBLを取り入れることが可能なようです。
脚VBL
手VBLと並んでネットでも見かけるのが脚VBL。
ノースフェイスのアルパインクライマーがそうであったように、こちらもゴム素材であるネオプレンを使った靴下を使うことで簡単に実践可能です。
沢登りで使われることが多いネオプレン靴下ですね。
ぼくも実際にやってみました。
レイヤリングは人によって違うようですが、VBLのメリットを活かし「靴下を濡らさない」「脚を蒸らす」ためにネオプレン靴下→ウール靴下→登山靴の組み合わせが良いと思います。
ぼくの感想は、靴のフィット感がきつくなって嫌だったというのが一番。
保温力的には上がってるのかもしれないけど、脚が痛くなってしまっては本末転倒です。
冬山で1泊以上縦走で靴や靴下をできるだけ濡らしたくないシチュエーションなら魅力が増えるのかもと思いますが、日帰りでは絶対やらないなという感想で、手VBL以上に万人受けはしないと思いました。
ビニール脚VBL
ネオプレンの脚VBLが合わず、良い感じの商品を見つけたのでビニール脚VBLを始めました。
ビニール靴下→ウール靴下で履いてます。
まだ数回しか使ってなくて検証不足ですが、確実に冷え防止にはなります。
ただビニールなのでかかとがずれる感覚が気になります。
それがどう影響するのかわかりませんが安く試せるので気になったなら試してみるのはアリでしょう。
寝袋VBL
まだ試してませんが、寝袋でのVBLシステム。
透湿性ゼロのインナーシーツというモノのようです。
海外ではいくつか製品化されてるものがあるようです。
種類は大きく2種類で写真のようなPU加工されたナイロンを使った素材。テントのレインフライやタープと同様の素材ですね。
そしてアルミ素材を蒸着したエマージェンシーシート状のシュラフカバーのようなVBLインナーです。これはSOLのビビィを寝袋の中に入れた状態に近い気がします。
エマージェンシーシートを寝袋内に入れたことはありますが、カシャカシャ音と蒸れの不快感しか記憶にありませんね。
それでも知ってしまうと「蒸れ状態で寝るってどう考えても不快でしょ。でも寝袋の汗濡れが無くなるのか・・・」と思ってしまって気になって寝袋でしか寝れません。
安く導入できる方法が思いつけば試すかもしれません。
まとめ
「濡れ=ダメ、ゼッタイ!」と信じ切っていたため、濡れることで暖かいなんて考え方に衝撃を受けたVBLシステムでした。
まだまだ知らない概念があることに喜びを感じるアウトドア生活です。
あらゆる欲望だけが明日への渇望なのです。
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